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ー至福ー223
だけど本当に好きになった人で、もう直ぐ結婚するかもしれない人なのだから頼ってもいいのでないのであろうか。
結婚する相手というのは、普通の友達ではない。 普通の恋人ではない。
これが普通の恋人や友達だったら、自分が思っている事を口に出さなくてもいいのかもしれないのだけど、結婚する人となると何だか心の中から言い合える仲だと思うからだ。
そう後は自分が雄介に頼むだけ。
たったそれだけの事を簡単に口にする事が出来たら、人間悩む必要がない。 だけど悩むから人間なのであろう。
汗で流した体をタオルで拭き、俺は何事もなかったかのように二階の自分達の部屋へと向かう。
「ゴメン……遅くなって……」
ドアを開けると同時に軽い感じで言う俺。 そんな俺の事は気にしてないのか雄介はベッドでうつ伏せの状態でスマホを見ている姿が目に入って来る。
さっきまで首を傾げっぱなしだったのは雄介の方だったのかもしれないのだが、今度は俺の方がその雄介の行動に首を傾げる番だ。
一体、雄介は自分の声が聞こえない位に何を真剣に見ているのであろうか。
俺の方は背後からゆっくりと雄介に近付いてみる。
するとスマホの画面に見えて来たのは、大人の玩具だ。
そこに一瞬目を見開いて体の動きを止めてしまう俺。 そして俺の方は思わず口にしてしまっていた。
「ちょ、な、何見てんだよ……!」
未だにそういう事に慣れてない俺の方は顔を真っ赤にさせながら言う。
「あ、望……。 戻って来ておったんか? あ、これ? 今はこういうグッズっていうのはわざわざ買いに行かなくても通販で買えんねんやろ? せやから、なんか新しいの出てへんかな? って思って見ておっただけなんやけどな」
そこで俺の方は息を吐く。 寧ろ自分を落ち着かせる為にだ。 今の俺にはホントそういう物だけでも体の方は熱くなってしまうのだから。
「俺等って、恋人同士になってからやと付き合って長いやんか……だからやなぁ、そろそろ、そういう事に関してマンネリ化してきてるやろ? だから、そろそろ変わった事、したらええんかな? って思ってな」
その言葉に俺の心の中では手をパンと叩く。 そう心の中では雄介の言葉に納得したからだ。 だけど表面の俺というのは、
「べ、別に……そんな物使わなくたって……」
そう言いながら俺の方は雄介の隣へと体をベッドへと滑り込ませるのだ。 だがその直後、雄介の口から出た言葉に顔が真っ赤になったのは間違い無いだろう。
ホント、無意識っていうのは怖い。 気付いた時にはきっと心に思った事が表に出てしまうという事なのだから。
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