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ー未知ー2

 確かに俺達の仕事というのは忙しい。 だけどここまで埃っぽいと体が勝手に咳き込んでしまいそうだ。 「あー! もう、我慢出来へん!」  そう言って雄介は即ソファから立ち上がって、窓を開けに向かう。  その窓だって本当に懐かしいと思う程だ。  緑色の人工芝生に洗濯物を干す物干し竿。  だけど何だか気持ち的に錆びているようにも見えるのは気のせいであろうか。  こう何だか暫く使われてないような感じがするからだ。 「なぁ、その物干し竿錆びてるっていうのか、使ってない感じがしねぇ?」 「あ、ああ……あー、確かになぁ、なんかこう暫く使ってませんみたいな感じするなぁ。 部屋も埃っぽかったし、あいつ等家事っていうのはやらないんと違う?」 「掃除はどうにかしなくてもっていうのか、しなきゃならないのかもしれないけど……流石に洗濯物はどうにもならないだろー?」 「あー、いや……俺等の服っていうのは、スーツが多いやんか……せやから、洗うのはシャツだけでええ訳やし、スーツはクリーニングに出しちゃえばええ訳やしな」 「そんでも、下着とか靴下もあんだろうが……。 ま、あいつ等の場合、まだ、親から離れたばっかだからなぁ、それに一緒にいるのが兄弟だから、どっちが家事やる? とかで揉めてそうだし……」 「ま、その可能性はあるわなぁ。 とりあえず、飯食べてから掃除した方がええのかもな」 「あ、ああ……そうみたいだな」  そう言うと、俺達というのは、何も声を掛けていないのにも関わらず、行動を開始するのだ。  行き先は近くのスーパー。  もう雄介と俺とでは、『阿吽の呼吸』なのかもしれない。  俺の方はとりあえず車の用意をし、雄介の方はエコバックとかを用意する。  そして何も言わずと玄関へと向かうと、雄介の方も既に靴を履いている状態だった。 「ほな、行こうか?」 「あ、ああ……そうだな」  そして玄関の横にある車庫から車を出し、とりあえず今日は俺が運転するのだ。 「ホント、車を運転するなんて何ヶ月振りだろ?」 「ホンマやねぇ」 「ま、とりあえず体も頭も覚えてるっていう感じかな?」 「そやね……ほな、スーパー行こうか? どうせ、あいつ等の事やから、冷蔵庫の中、なんもないだろうしな」 「まぁな……」  そんな事を想像して、俺達の方はスーパーへと向かうのだ。  車で五分位の所にスーパーはある。  雄介はスーパーに入るなり籠を持って、商品選びを始める。 「今日は何がええ?」  そう俺に訪ねてくる雄介。 「え? 何でもいいんだけど?」 「それが、一番困るメニューなんやって」  そう半分は冗談のように言う雄介にクスリとすると、雄介の方もクスリとしていた。  そこで買い物をしていると、こう知ってる人が俺達の横を通ったような気がする。  だけど俺達の方は、分からないままだ。  すると向こうの方から声を掛けて来て、 「ん? 雄介叔父さん?」  その言葉で俺達の方も歩みを止めるのだった。

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