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ー未知ー3
「……へ?」
雄介も俺もその『雄介叔父さん』っていう言葉にほぼ同時に反応していたようだ。 だって声がシンクロしてしまっていたのだから。
そしてそれと同時に視線というのか顔ごと声がした方に向けていた俺達。
「クス……やっぱ、そうだったんだ……」
その青年というのか、少年というのか、まだ青年には達してはないものの、もう少年という顔つきではない人物に雄介も俺も首を傾げてしまう。
だけどそこにいた少年は確かに今雄介の事を『雄介叔父さん』と言っていたのだから、そう言う人物というのはある意味限定される。
そこで一瞬考えていた俺達なのだけど、次の瞬間、雄介と俺は視線を合わせて、再び、
「あー! そういう事!」
「あー! そういう事なっ!」
と大声で納得していたのである。
「あー、懐かしいわぁっ! 琉斗やろ?」
そう雄介の方は琉斗の方へと視線を向けると、大きく笑顔で頷いてくれていた。 身長は俺よりまだ小さい位だからなのか、雄介の方は琉斗身長に合わせて屈んで話を始める。
琉斗とは本当に小さい頃に会って以来、会ってなかったのだから、気付いた時にはもうこんなにも大きくなっているとは思ってなかったという事だ。
「琉斗は幾つになったん?」
「俺は、中二になったよ」
声だって、あの幼き頃とは全く違う声だ。 そりゃそうだろう。 俺達と琉斗とは琉斗が幼き頃で止まってしまっているのだから。 それに男の子だったら、声も変わってしまうのだから当然なのかもしれない。
「姉貴は元気なんか? まぁ、この前電話した時には、めっちゃ元気やったけどな」
「元気に決まってんじゃん! だってさ、あのお母さんだよっ!」
その言葉に雄介の方は吹いてしまっていたようにも思える。 まぁ、琉斗がふざけたようにそう言うのだから、当然そうだと思ったからなのであろう。
「まぁ、そうやんなぁ……あの、姉貴やもんなぁ……」
そうしみじみ言う雄介に琉斗の方も吹きそうになっていた。
「そういや、何で、雄介叔父さん達、ここに居るの? あれ? 島で住んでるんじゃなかったんだっけ?」
もしかしたら、琉斗の場合にはそこで情報が終わっているのかもしれない。 それに琉斗の所は母子家庭なのだから、中学生と親一人では既に話し合う時間もあまり無いのかもしれないという事なのであろう。
美里さんは昼間仕事していたり、または夜仕事をしていたら、もうそんなに子供と向き合う時間というのは無いという事なのであろう。 そうなると琉斗はいつも一人という事なのかもしれない。
本当、前の時にも琉斗と俺というのは、似たり寄ったりだったけど、またもや似たり寄ったりの人生を歩んでいるようにも思える。
「あ、そこな……ま、そこは、色々あってな……。 その事については、そのうち姉貴の所に行って話すし……」
そう言いづらそうに言っている雄介に一瞬ハテナマークを浮かべた琉斗だったのだが、もう中学生だけあってか何かあるのだと察したのであろう。
「とりあえず、何か事情があって、ここに戻って来た。 っていう事なんだね……」
「まぁ、そういう事な……それに、外で話せるような内容じゃないしな。 今はそれについては堪忍して……」
そう言って雄介は琉斗に向けて手を合わせてお願いするかのように言っていた。
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