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ー未知ー5

「そこは、雄介が決めてくれるんじゃねぇのか?」  ちょっと低めで言ってしまっていた俺。 「ん? ……あ、そうか……そういう事な」  と今の俺の低い感じの声で何か気付いてくれたのか、雄介の方は変に納得していた感じがある。 「……分かった! そこは、ホンマ真剣に俺が考えておくな。 そやね、そこはある意味兄弟間の話でもあるし、姉貴は女性なんやし、なんやろ? こうなぁ、他人には聞かせらんない所もあるやろうし……とりあえず、俺と姉貴メインでええか?」  その雄介の言葉に俺の方は首を傾げる。  寧ろ、俺が言いたいのはそういう事ではない。  美里さんと話をしなければならないのは、俺も何だから、そこは俺も美里さんと話する時には行かなきゃならないのは分かっているのだけど、雄介がそういう話を引っ張って話し合いに漕ぎ着けて欲しいという意味だ。 「んー、なんか違うんだよなぁ? お前の考え方って、たまにこう世間とというのか俺と考えている事が違うっていうのかな?」  そこまで言っていると、自宅の車庫まで着いてしまっていた。 そうスーパーと然程遠くは無いのだから、そう雄介と長い話をしている場合ではない距離なのだから。  そう俺の方は半分怒った感じになってしまいながら車を降りる。  もしかしたらこれから雄介とは意見の言い合いになるかもしれない。 全くもって今の空気というのはもう甘々な雰囲気ではないのだから。  雄介は今の俺の言葉で何か考えてしまっているのか、無意識のうちに車から降りて無意識のうちに後部座席に積んでいた荷物を降ろして、玄関の方へと足を向けていたのだから。 俺の方はその雄介の後に着いて玄関へと向かう。  しかし部屋に入ってからの雄介っていうのは、天井へと視線を向けたままで、何もかも無意識に行動出来ていると思う。 まぁ、勝手知った家なのだから、何か考え事しながらでも行動が出来るといった所だからなのであろう。  キッチンに入ってからも雄介の方は買って来た品物を冷蔵庫へとしまいながら、何かぶつぶつと言っているようにも思える。  今日は何を作るのかも雄介の頭の中には入っているのかもしれない。  それを俺はリビングテーブルから見ていた。  そう全くもって俺の方は何もやる事が無いのだから、今はただただボッーとしているしかなかったからなのかもしれない。  ソファに座ってテレビを見ているのもいいけど、何だか今のこの雰囲気では、そんな感じではないような気がするからだ。  雄介は簡単に洗い物をすると、夕飯の準備に取り掛かる。 リズムの良い包丁さばき、鍋の中でぐつぐつと野菜達を茹でる音、そして最後にはこのリビング中にお腹を空かせるようないい匂いが漂って来る。  たまには俺の方もこう何も考えずにボッーとしている時間があるっていうのもいいのかもしれないと思った位だ。

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