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ー未知ー19

 確かにあの時の俺は、その子の手術をしたのだから、俺にしては珍しく小児病棟を訪れた時だった。  本当にあの時の俺というのは、子供に慣れてなくてあまり小児病棟には近寄らなかったのだけど、その子の手術をしたばかりだったのだから気になって雄介もその子の担当だったし、行った気がする。 その時、朔望と一緒に居たのは雄介だ。  確かに、俺が雄介の事を探してナースステーション裏にあるちょっとした休憩室に覗きに行った時には、朔望が雄介の上に乗っかっていたような気がしたのは気のせいであろうか。 だけどあの瞬時で俺の方は、雄介はそんな事はしないと思っていたのだから、あまり気にはしてなかったのだけど、確かに雄介の言う通り、あの時、雄介が朔望と何かあったのは間違いないようだ。  それで俺がギリギリに間に合って、雄介は朔望に何もされないままで終わったのだから、いや確か挿れられる直前だったようにも思えるのだ。  本当、その前には朔望と雄介の間にどんな事があったのであろうか。 寧ろこんな暇な時間が出来たからこそ、今真実が知れる所なのかもしれない。 「そういやさ、あの時、お前から朔望の事を誘ったっていう訳じゃねぇよな?」  そこは全く疑う事なく聞く俺。 そこは本当に俺の方が雄介の事を信じているからなのかもしれない。 「へ? あ、まぁ……そこは、全くもって、俺が朔望の事なんか誘う訳がないやんかぁ……」  そう動揺もせず素直に答えてくれる所から、やはり全くもって雄介の場合、朔望の事は雄介が誘ったっていう訳では無さそうだ。 そこに安心する俺。 「んじゃあ、何で、俺があそこに行った時に、お前は朔望に組み敷かれていた訳?」 「それは、勝手にアイツが襲って来た訳で……ホンマに、俺は全くもって何も考えても行動もしとらんからな。 寧ろ、俺は本当に望一筋やし……」  そこにも全く焦りを感じさせない雄介。 きっとこれも本当のことだろう。 「あ、でもな……その……」  俺が雄介に質問してないのに話を始めた雄介だったのだが、先ほどの堂々とした感じではなく、視線を俺から完全に逸らしている所からすると、これがきっと雄介からしてみたら後ろめたい事だったのであろう。 「あー、一瞬だけやったのだけど、朔望と望を見間違えたのは確かなんだわぁ……」 「……へ?」  その雄介の言葉に俺の方は声を裏返す。  まさか雄介が俺と朔望を見間違えるっていう事が俺からしてみたら信じられないっていう所なのかもしれない。 「だって、俺と朔望って、お前からしてみたら、見間違える事なんて今までなかった事だろ?」 「あー、いやぁー、あん時はな……ホンマ、暫く望の事さえもプライベートで見ておらんかったし、なんていうんか……望に飢えていた時やったから、朔望の事を望に見間違えていただけで……」  本当に雄介からしてみたら、その時の事は人生の中でというのか、俺と付き合い始めての汚点だったのかもしれない。 こう本当に心から謝っている感じで言っているのだから。

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