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ー未知ー20

 その雄介後ろめたい気持ちっていうのは、本当にそれだけなんだろう。 だけど雄介が話を続けるもんだから、俺の方は聞いていた。 「ホンマに、あん時はスマン!」  そう言って頭まで下げて言ってくる雄介。  やっぱり雄介のそういう所が本当に凄いと思う所だ。  自分が間違っている事があれば必ず謝る所が本当に凄い。  普通人間だったら、プライドみたいなのが邪魔して、なかなか人に謝るのは出来ないけど、何でか雄介の場合には謝って来る事が多い。 だけどそれはよくよく考えてみると、案外俺だけなのかもしれない。 「そういう事だったのな……」  と雄介のその誠意に納得する俺。 「もう、雄介……そこについては謝らなくても大丈夫だからさ……。 だけど、また、これから、そういう事があるかもしれねぇだろ? 朔望達は島の方に行ったけど……朔望達じゃなくて、これからは、もしかしたら、他にも朔望みたいな奴が出てくるかもしれないのだから、それに向けて対処出来るようにしてたらいいんじゃねぇのか? ってかさ、雄介……そろそろ、お前自覚した方がいいんじゃねぇのか? 確かに、そこの件については、お前が朔望の事を俺だと一瞬間違えたっていう事もあるのだろうけど、誰かに襲われないっていう事はねぇんだしさ。 または、他の奴に愛されないように気を付けろよ」 「俺が……? そんな事、ある訳ないやんかぁ……全然、俺なんかモテないしなぁ……」  そう雄介が言った直後、俺はテーブルを乗り出して、 「ホント、お前って自覚がねぇの! 本当にそういう所気付けよ……。 モテないんじゃなくて、逆にお前っていうのは高嶺の花な訳……絶対に恋人とかがいる。 と思われているから、近付こうと思わない奴の方が多いって訳なんだからな」  俺はそこまで言って、ある事を思い出す。 「な! 確かに午後からは仕事する。 って親父に言っちまったけど、婚約指輪を買いに行かねぇか?」  その俺の言葉の後に暫くの間、時計が秒針を刻む音が聞こえて来ていたのは気のせいであろうか。 確かに時としては数秒だったように思えるのだけど、その時というのが長く感じたようにも思える。 「……へ? え?」  そう言いながら、俺は雄介の顔を見つめる。 そうそんな時が俺の中でパニック状態だったからだ。 「へ? え? 今、俺なんか変な事言ってたのか?」 「え? あー、まぁ……変な事ではないんやけどな……ま、望からそんな言葉が出てくるとは思ってなかったっていう事かな?」  そう淡々と答えてくれる所からすると、そういう事なのであろう。 「そっか……ほな、午後からは婚約指輪買いに行こうか? 望って案外独占欲みたいなのが強いんやなっ!」  何だかクスクスと雄介が笑っているように思えたのだけど、雄介の方は幸せそうに言っていたのだからそこは気にしないで、 「あ、ああ……」  と答える俺。

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