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ー未知ー62

 だけど俺の性格上、こういう行為こそ、素直になることは出来ないのだから、やはり全てを雄介に任せるしかないのかもしれない。  そこで自分に向かって軽くため息みたいなのを吐くと、 「雄介のペースでいい……」  と半分投げやりな感じで言い放っていたのかもしれない。  だけど雄介の方はそんな俺のことは気にしないようで、クスリとすると、俺の体を抱き締める。  俺の腕の付け根辺りに自分の腕を入れて来てギュッと抱き締めて来てくれる雄介。  こう人間って抱き締められると安心してしまうのはなんなんだろうか。 いや抱き締められるから安心感が生まれて来ているのであろう。  何だか俺の体からその安心感のおかげで力が抜けてきているようにも思える。  人間って、抱き締められるだけで安心する。  それが一番の正解なんだろう。  そして再び雄介が唇を重ねて来る。  再び俺の鼓動が早くなって来た。  本当に俺は雄介といると心臓がいくつあっても足りないくらいなのかもしれない。 いやもう何十回、何百回と鼓動が早くなって来てしまっている。 こういう事で鼓動が早く動くのはきっと体に良さそうなことだけど、本当にこういう鼓動っていうのは俺からしてみたら雄介にだけなのであろう。  そう思っていると自然に心が温かくなってきたようにも思える。  これがきっと幸せという感じなのであろう。  確かに、俺は雄介といるようになってからは幸せな感じを何度も感じて来た。 本当に運命の人と出会うとずっとずっと幸せな気持ちというのは消えないのかもしれない。  やはり何だか雄介には何か答えて上げたい。 ずっとずっと雄介は俺に幸せという感情を教えてくれたのだから、恩返しをしないといけないような気がしてきた。 いや恩返しをしたい。 ではなくて、自然に恩返しをしなくてはならないと思って来ているのであろう。  それに人間っていうのは皆平等なのだから、恋人同士なら尚更、平等でいなければならないのではないだろうか。  俺は雄介に幸せを貰っているのだから、今度はゆっくりと返す番なのかもしれない。  だからなのか俺の方は雄介の首へと両腕を回すと、唇を重ねる。  これだって今雄介が唇を重ねて来たのだから、立派なお返しになるだろう。  唇を離すと俺は雄介に向かってクスリとする。 すると雄介の方も俺に向かってクスリとしてくれるのだ。 「望……キスしてくれて、ありがとうな……」  そう感謝の気持ちを述べてくれる雄介。  本当に雄介のそんなところも好きだ。  雄介って、何かある毎に感謝の気持ちを言ってくれる。 本当にこれは人間として大事なことであると思っている。 だけど割とそんな簡単な言葉でも何かプライドみたいなのが邪魔して簡単に口に出来ないのが俺だ。

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