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ー未知ー88
「でも、とりあえず、俺の方はお前に出会えて良かったと思ってるよ。 本当にこの時代で俺の事を見つけてくれてありがとうな……」
とそこは本気で雄介の事を見つめる俺。
雄介の首に腕を回しているのだから、俺の方は全くもって今の雄介の表情を読み取る事は出来ないのだが、何だか俺のその言葉で雄介がクスリとか安心したとかそんな雰囲気を汲み取れたような気がする。 だってそこは体から急に力が抜けたからだ。
「ホンマ、望……そないな風に思ってくれて、ありがとうな……。 今、俺っていうのはホンマに幸せな時やって思うってるわぁ……」
「ってか、それっていうのはさ、今までの自分の行いが自分に返って来てるんじゃねぇのか?」
俺の方はその言葉を本気で雄介に伝えたくて、雄介の瞳を見つめる。
その俺の行動に寧ろキョトンとしているのは雄介の方だ。
「……ん? そうなんか?」
「んー……」
と俺の方はその雄介の言葉で一瞬頬を膨らませそうになったのだが、今一度雄介の首に腕を回し自分の方へと引き寄せると、
「だってさ、今まで俺はあまりお前みたいな人と出会った事がなくて、毎日が寂しくて、ただただがむしゃらに仕事とか勉強とかってして来たけど、お前に出会ってからの俺の人生っていうのは、お前のおかげで毎日が楽しくて、毎日が喜怒哀楽に満ち溢れていて、やっと、自分が人生を謳歌している気持ちになれたしな。 それで、それまではトゲトゲしていた人間だったけど、お前と付き合い出してからの俺っていうのは、何だか自分でも思うのだけど、丸くなれたような気がするんだよな。 最初の俺っていうのは、お前に冷たかっただろ?」
その俺からの問いに一瞬雄介の方は時が止まってしまったかのように思えたのだけど、もう次の瞬間には、
「まぁ……確かになぁ……。 でも、俺の方はそういうの全然気にしてなかったっていうのかな? だってな、自分が好きになった人間なんやから、例えば性格だけが悪いからと言って、別れるのはなんか違うやろ? 性格も何も引っくるめて自分が好きになったんやから、そこも受け入れなぁ、アカンやろうしな。 せやから、俺の方はそんなに望の事、気にしてなかったっていうんかな?」
「だけどっ! 初めて家に来た日、俺とお前で喧嘩して、そのまま別れてしまう事あったじゃんか……あの時は?」
「だって、あん時は、俺じゃなくて、望が先に俺の事拒否したやろ? せやから、もう、俺達の関係っていうのは、アカンのかな? って思うてしまっただけやし……」
そう言われてみればそうなのかもしれない。
あの時、先に雄介の方を拒否ったのは俺の方なのだから。
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