610 / 656

ー未知ー105

「あ……」  そう言って、雄介は俺の方を向いた後、すぐに顔を俯けてしまった。  きっとまだまだ雄介の中では不安でいっぱいなんだろう、と俺は悟った。  しかし、雄介の表情は違った。 次の瞬間にはいつもの笑顔を俺に向けてくれた。  逆に俺は、そんな雄介に目を丸くしてしまったのかもしれない。  俺が目をパチクリとさせていると、 「確かに望の言う通りやな……ホンマ、俺ってなんて罰当たりなこと、言うとったんやろ? こんなに間近に俺のことを応援してくれてる人がおんのに……暗くなってもうえ……ホンマ、俺の方がバカやんかぁ……」  そう言って、雄介は俺の腰辺りを抱き締めてきた。  俺はこの話になってから、ずっとベッドの上で立膝状態でいたのだから、雄介からしてみれば、俺の腰辺りが抱き締めるのに丁度いい高さだったのであろう。 「ホンマに俺、望のことを好きになって良かったと思ってるわぁ……確かにな最初の方は、望がそんな性格やから、沢山誤解が多かったのやけど、付き合っていくうちに、その望が一生懸命俺に好きやって言ってくれるっていうのが逆に愛おしくなってきたっていうんかな? いや、言葉で言わなくても望の場合には、ホンマ、俺のことが好きやっていうのが伝わって来ていたっていうんかな? せやから、俺の方もずっとずっと望のことが好きで好きで来られたっていうんかな?」 「なら、いいんじゃねぇのか? しかも、今は和也たちはいないんだし……それに、和也たちはあくまで親友っていうだけで、それ以上ではない関係なんだからさ……確かに、親友っていうのは大事なのは分かるのだけど……恋人同士までの関係にはならないだからよ……」  もしかしたら、雄介にこんなフォローみたいなことを言ったのは初めてなのかもしれない。  本当に今までの俺っていうのは、雄介にここまで言ったことはなかったのかもしれない。 だけど本気で俺は雄介のことを好きになったのだから、当然、結婚する一歩手前まで来ている仲なのだから、フォローできるところはフォローして上げた方がいいのではないかと思ったのかもしれない。  確かに今は結婚寸前な俺たちではあるのだけど、結婚したら、当然夫夫になる訳で、もし、そうなったら、もっともっと俺の方は雄介のことを信じフォローしていかないといけないだろう。 それに今はもう本当に雄介とずっと一緒に生きて行きたいと思っているからこそ、雄介のことをフォローしていかないといけないと思ったのかもしれない。  俺がそう言って笑顔で雄介のことを待つ。  だってそこは流石に考えるところだからだ。

ともだちにシェアしよう!