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ー未知ー117

 「あ……」と思わず、口にしてしまった。  こんなに間近で雄介と視線を合わせるのは久しぶりかもしれない。  いや、視線は合わせているけれど、未だに雄介と視線を合わせるのに慣れていない自分がいる。 そして毎回のように、心臓が高鳴る。 「早よ……望も靴を履いて……」 「あ、ああ……」  一瞬、まるで魔法にかかったかのように、時が止まっていた。 しかし、雄介が声をかけてくれたことで、一気に現実に戻ったような気がするのだが、それは気のせいかもしれない。  その後、俺は靴を履いて雄介と一緒に家を出る。  しかし、本当に前にデパートへ出かけた時と同じような気がする。 いや、その時は雄介の車で行ったから、違うのかもしれない。  でも、あの時の思い出がフラッシュバックしてくる。 いや、ここは違う。 前は実家から雄介の住んでいたアパートかマンションに行ってから、雄介の車で出かけた。  今は自分の家から車で出かけているから、そこは違うはずだ。  さっきから俺は何を考えているんだろう。  確かに、前にあったデパートの火災のことを思い出しているのは間違いないけれど、頭の中であの日の出来事と被らせてしまっているのは気のせいだろうか。  今でも、雄介が先に車に乗って、俺が後から助手席に座るシーンが、あの火災の日と同じように見えてくる。  しかし、服装は違う。  いや、あれから何年も経っているから、服装は違うのは間違いないけれど、何だか嫌な予感がして仕方がない。  でも、人間ってトラウマな出来事をフラッシュバックしてしまうものなのか。 「ほな、行くなっ!」  ここまでの雄介の言葉も同じだったかもしれない。  フラッシュバック? それとも夢で同じシーンを見たのか。 夢で見たということは予知夢かもしれない。 予知夢とは、夢の中で未来の出来事を見ることだ。  いつものように、雄介とくだらない話をしながら、事故渋滞で車が進まないが、車内では雄介との時間を楽しんでいた。 渋滞なんて気にならないくらいでもある。  いや、俺たちにとってはそれが日常だから、気にすることはないけれど、事故渋滞がその先で起きていないことを祈るばかりだ。

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