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ー未知ー118

 俺は雄介と話をしながらも、予知夢だか昔の思い出だかの記憶を思い出す。  もしその時の記憶のままだったら、その先で渋滞した後は、何だか嫌な夢だったような気がするからだ。 だけどそこまで思い出しているのに、そっから先というのが思い出せない。  そう思っていたら、その先からは事故渋滞してないことに安堵する俺。  やっぱりその記憶は気のせいだったのであろうか。  そこに安心し、無意識のうちに息を思いっきり吐いてしまっていた。  そこに雄介が、不思議そうな瞳で俺の事を見ていたように思える。  だからなのか、 「どうしたん? 久しぶりに車に乗ったから、気持ち悪くなってしもうたん?」 「あ、いや……それは、大丈夫だ……」  と相変わらず素っ気ない返事をする俺。  そう、これが寧ろ普通の俺の姿なのだから。  そして雄介の方は相変わらず、それ以上は突っ込まない感じでもある。  そこからは悠々と車は進み、前に来たデパートへと到着するのだ。 「ここで、良かったよな?」 「へ? あ、ああ……まぁな……」  俺的にはやはりトラウマが残るデパートではなくて、他のデパートに行きたかったような気がしたのだけど、きっと雄介の頭の中で残っている場所はこのデパートしかなかったということだろう。  確かに事前に他のデパートの場所を調べておけば良かったのだけど、今日はそんな余裕がなかったようにも思えるし、思いつかなかったというのもあるのかもしれない。  俺達の世代っていうのは、あまりそんなにネットを頻繁に使用するような世代ではないのだから、そうそうスマホに頼らないということなのであろう。  なら仕方がない。 今日は時間も無かったせいか、そのデパートの駐車場へと入って行く。  しかしこの外見からして、俺達が来てない間にリニューアルしたようだ。 そりゃあんな火事があったようなデパートなのだから、当たり前なのかもしれないのだけど、俺達の方は本当にそれだけ来てないということだろう。  そして駐車場で車から降りる。  このデパートも駐車場は立体駐車場で、デパートの上の階に車を停められるようになっていた。 前は地下に駐車場があったような気がしたのだが、今は上に駐車場を作ったようだ。  何だかそこにも安心してしまったのは気のせいであろうか。  そう、予知夢だか頭の奥底にある記憶とは違っているからなのかもしれない。  今日は革靴だからなのか駐車場内では足音が響く。  そしてエレベーターで地下へと向かう俺達。  流石は人口が多い東京なのだから、エレベーター内は沢山の人がギリギリで乗っていた。

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