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ー未知ー121

 そこで、俺たちは急須とお茶を買って、お店を出た。  これで本当に納得した買い物ができたのかもしれない。 「ほな、今日はこれでええな?」  そう、雄介の方も俺の方を確かめるように笑顔で聞いてくる。  本当に雄介の笑顔っていうのは、いつ見ても素敵だ。  特に真面目に見てしまった時なんかはそうなのかもしれない。  いや、きっと雄介自身が心からの笑顔を作ってくれているからこそ、雄介の笑顔っていうのは素敵というのか輝いて見えているのかもしれない。  何だかその笑顔に吸い込まれるかのように、俺の方は自然と腕を絡ませる。  確かに今までの俺にはなかった行動なのかもしれないけど、でも何でか今日は雄介に腕を絡めたくなっていた。  島ではあまりそういうことはできないような雰囲気はまだあったのだけど、都会に来ると、もう意外にも沢山の同性カップルが腕を組んで歩いてたり、楽しくおしゃべりしながら歩いているのを見ていたら、自分もそういう風にしてもいいのかな? と思えて来たからなのかもしれない。  一瞬、雄介の方は、俺のその行動に驚いたような気配があったのだけど、それは一瞬で肩の力を抜いてくれたようで、寧ろ安心したような表情で俺のことを見てくれていた。  本当に、雄介っていうのは誰にも渡したくはない。  今じゃ、もしかしたら雄介よりも俺の方が独占欲というのは強くなって来ているのかもしれない。  今だって、実は雄介のことを独り占めしたくて腕を絡ませたくなったのも一部ある。  雄介は見た目爽やか系で、長身で、医者をしているのだからお金持ちで、完全に女性からしてみたら理想のタイプに入ってしまうのだから、他の女性も狙ってくる可能性だって高い。  それに現に昔俺と歩いていても海水浴場に行った時だって、ナンパされまくっていたのだから、当然俺の方は警戒とかもするだろう。  そんなことを思っていたら、雄介が突然、 「急にどうしたん?」  と聞いて来た。 「……へ?」  と雄介のその一言に俺は目を点にしながら雄介を見上げる。  だって今まで俺にそれについて聞いて来なかったのだから、当然だろう。 「って、何だって、急に、聞いて来たんだ?」  その俺の言葉に雄介の方は顔を空の方へと向け、 「あー、そのな……なんていうんか……望からしてみたら、珍しい行動をしてるなぁ……ってな」  ま、確かに俺からしてみたら本当に珍しい行動をしていたのは自覚はあるんだけど。 たった数分間を空けてそれを聞かれるとちょっと恥ずかしいのかもしれない。

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