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ー未知ー123

 本当にそうやって雄介に素直に言えるようになったのは、雄介のおかげだ。  俺達っていうのは、これまでに何回も俺のその性格について話し合っても来たし、喧嘩もして来たのだから。 元からそういう性格の俺だっていい加減治していくというもんだろう。 それに俺の方だって雄介とずっと一緒に居たいという気持ちは変わらないのだから、素直な性格というところには努力して来たはずだ。  だから今回は素直に雄介に向けて意見を言ったつもりでもある。  暫く雄介は俺のその言葉に考えていたようにも思えたのだが、やはりそこは雄介っていうところであろうか、車を運転しているからなのか、顔は正面を向いたままだったのだけど、 「あー、そうなのな……ほな、スーパーに寄ってってもええか?」  そう真剣な声で言って来てくれる。  きっと雄介のことだから、そう真剣に言ったのには、車を運転しているから真剣な表情で俺に向けて言えないのだから、せめて声だけでも真剣にとでもいうことなのであろう。 「あ、ああ……それでいい……」  俺の方もそう真剣に答える。  本当、こういったのんびりとした時間というのは、俺達にはなかった。 だからなのか今この時間というのはゆっくりと雄介が会話出来る時間なんだと思う。  確かにこれからの時間は、もしかしたら今まで以上に時間がないのかもしれないのだから。  今後については雄介とは真剣に考えて来たつもりだ。 後はそれを美里さんに伝えるだけなのだから。  それがもう明日ということだ。  俺は真剣な表情で視線を正面へと向ける。  そう自分自身明日に向けて、イメージトレーニングしたかったからだ。  今回の話について確かに雄介に全部話を任せるつもりなんてない。 こう自分の意見も美里さんには言うつもりだ。 だからこうしてイメージトレーニングでもしておかないと実際話し合いになった時に言葉が出て来ないかもしれないのだから、俺的には今のうちにというところだろう。  急に車内が静かになってしまい、雄介がチラリと俺の方へと視線を向けて来る。 だけど瞬時に正面へと視線を向けたところを見ると、俺を見て何か感じてくれたのかもしれない。 俺に話し掛けなかったのだから。  それから暫くしてスーパーの駐車場へと到着すると、 「ほな、今日はオムレツな」  と今までの空気を一変するかのように雄介は俺に向けて笑顔でそう言って来てくれる。 「え? あ、ああ……雄介がそれにしたいって言うんだったら、俺の方は別に、それで、構わないからさ……」  それと同時に俺の方も車を降りるのだ。

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