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ー未知ー138

 その間も俺の鼓動は早く打ちつける。 そして雄介の方は俺の言葉を真面目に考えてくれているようだ。 手を顎に当て首を捻らせているのだから。 「なんやろ? 今日の望はこういう行為に関して、こうなんていうんか? ヤル気みたいなのが感じられたから、そう聞いてみただけじゃ、アカンのか?」  その言葉に今度俺の方が動揺し始める。 そう雄介は俺の行動や言動からこう何かヤル気みたいなのを感じたからなのかもしれない。  そこに俺の方は変に納得する。  だって雄介は今はもう医者という職業をしているのだから、俺の行動や言動でそう感じてくれたのだから。 やっぱり学校で心理学やらなんやらと勉強してきたからこそ、そう感じてくれたのであろう。 「雄介って、もう、十分過ぎる程、俺の事分かってくれているのな……」  そう言いながら、俺の方は雄介がいる後方へと視線を向け、そして雄介に向けて微笑むのだ。  確かに雄介の場合、昔から俺の事を分かってくれていたのだけど、医者になる勉強を始めてからは益々、俺の事を分かってくれているような気がする。 「ん? まぁ……望とは長年()るからな……。 それに、俺の方から好きになったやから、何もかも望のことを好きでおらんとなぁ……」  そこにちょっと意味がありそうな感じがしたのだけど、こんなところで喧嘩するのも勿体無いと思った俺は再び枕へと顔を埋めるのだ。  また少し経つと雄介はベッドへと物を置いたようで、俺の足元でベッドが沈む。 そして更にベッドのスプリングが沈んだところを見ると、雄介もベッドへと上がって来たのであろう。  ベッドへと上がると雄介は俺の背中を優しく摩って来る。  確かに体を重ねるという行為というのは当然気持ちいいことなのだけど、人に触れられるだけでも気持ちいい。 しかも雄介の場合には本気で俺の事を思ってくれているのだからなのか、温かい。 こうふんわりとした温かさが俺の体を包む。  今まで背中を摩ってかと思うと、俺が腰に巻いていたタオルへと手を掛けて、その中へと手を忍ばせて来るのだ。 要は女性のスカートの裾から手を忍ばせて来たということだ。  まさか雄介がそんなことをしてくるとは思ってなかった俺は、その一瞬で体をビクリとさせる。  そんな俺の姿に気付いたのか、雄介は俺の耳側で、 「今日は、変わったことがシたいって言うたやろ?」  その雄介の言葉に更に体をビクつかせる俺。  もう雄介とはこういう行為に関して長く続けて来たからなのか、俺の体はもう勝手に反応してしまうというのか期待してしまっているということなのであろう。  確かに雄介は今さっき『いつもとは違う感じでヤってええか?』と聞いて来ている。 本当に俺の方はその雄介の言葉に期待しているということなのであろう。

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