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ー未知ー143

 本当に雄介のもどかしい動きに、腰が勝手に動いてきてしまう俺。  だけど今日の雄介というのは、本当に中にある気持ちいいポイントになかなか触れて来てくれない。  俺からしてみたら痒いところに手が届いてないという状態でもあるのだから。  雄介に心をオープンにしてもらいたいと思うのなら、先ずは自分から動いてみないとと思うのだけど、どうしても俺の場合には動けなくなってしまう。  そこに俺はため息が出る。  そう自分に自己嫌悪状態だからだ。  確かに雄介に対してだけは、俺のことを信じて欲しくて普段の生活の中では素直になるように努力してきた筈なのだが、やはりこういう時というのは違うのかもしれない。  普段生活の中では、今ではそんな恥ずかしいことというのは無いのだけど、こういう行為というのは恥ずかしくて当たり前なのだから、そこは未だに素直になれないところだ。  そして雄介っていう人間っていうのは凄く優しい。  そうこういう行為に関しては絶対に無理強いをしないということだ。 寧ろ最近では優し過ぎて物足りないと思ってしまっている自分がいる。 本当にそういうところ自分でもわがままって思うところだ。  兎に角、今は自分の方が雄介に対して何かアピールをしないと雄介の場合、本当に優しすぎて動いてくれないのだから、やはり動くしか無いと思った俺は、 「何にある指……動かせ……」  そう何でかお願いしている側の俺の方が命令口調で言ってしまっていた。  だがこうもう掠れたような声というのか、快感で悶えている声というのか、既に声にならないような声だったからなのか、どうやら今の俺の言葉は雄介には届いてなかったようにも思える。 「へ? なんて?」  そう聞き返してくるくらいなのだから、やはり今の俺の言葉は雄介の耳には聞こえてなかったということだろう。  そこに半分心の中で項垂れながら、 「……だからさ……指動かせって言ってんだよ……」  大分さっきよりは文章にもなっているだろうし、少し大きめな声で言ったのだから、流石に雄介の耳にも届いているだろう。 「あ、あー! そういうことな……!」  と目を見開いてまで言って来たのだから流石に気付いてくれたのであろう。 そこに安堵する俺。 「指は動かしてんねんけどなぁ……?」 「……へ?」  そう何だか雄介じゃないみたいな反応に、俺の方が裏声を上げてしまう。  今日の雄介っていうのは、調子に乗っている感じがするのは気のせいであろうか。  そんな雄介に苛立ちを覚える。  俺がかなり素直になってきたのだから雄介がそんな態度になってしまったというのであろうか。 何だかよく分からないけど、とりあえずまた俺の方が何か動かなきゃいけないのかもしれない。

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