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ー未知ー144
そして俺の方は意を決したかのように半身を起こすと、雄介の肩へと両腕を回して、耳側で囁くように、
「俺の中、気持ち良くさせろって言ってんだよ……」
その俺の言葉に、雄介は俺の方へと顔を向けて顔を真っ赤にしながら目を丸くするのだ。
俺の方も自分からそんなことを言ってしまい顔を赤くしてしまう。
「な、今日の望はどうしたん? いやに積極的やんかぁ……」
「あ、いや……そういう訳じゃなくて……寧ろ、お前が意地悪なことをしてるからだろ?」
「へ? 俺の方は全くもって意地悪なことなんかしてせぇへんけど? 俺の方は寧ろいつもと変わらん感じでシてるつもりなんやけどなぁ」
「……へ?」
その雄介の言葉に再び裏声を上げたのが俺の方だ。
よくよく考えてみると確かにいつもと変わらない感じなのかもしれない。
雄介っていうのはこういう行為の時は、本当に優しくて丁寧で、こうゆっくりと癒されるような気持ち良さにもなってきて、っていう感じなのだから。
寧ろ俺の方が単純に雄介のその行為が物足りなく感じているのかもしれない。 だから今のそういう風に俺は言ってしまっていたのであろう。
「……ゴメン」
と何でか俺の方は雄介に謝ってしまっていた。
「もしかして、物足りなく感じてきてるっていう証拠なんか?」
「……!?」
その言葉に俺の方は再び顔を真っ赤にするのだ。
そう全くもって雄介の言う通りだからなのかもしれない。
だけどやはり俺の性格上、それを素直に言える訳もなく、雄介から視線を外すと、そこにクスリとする雄介。
やはりまだ俺の方は素直にはなれない。 っていうことだ。
いや努力はするとは言った。 だからさっき第一歩目とはいかないものの、俺的には頑張ってみたという方が正しいということだ。
そしたら急に雄介が、俺のことを抱き締めて来て、
「ホンマ、ありがとうな……俺の為に、素直になろうとしてくれてな……」
「は……え? あ、あー、ああ……」
俺の方は雄介のその反応に戸惑ってしまっていたのかもしれない。
「だって、それは、前にお前と約束したことだから……」
「ま、確かに、そやなぁ……。 でも、ホンマ、嬉しい……」
雄介にそう言ってもらえると胸の鼓動が早くなってくる。
「も、いいから……雄介……」
と最後は甘えたような声で雄介の名前を呼ぶ俺。
「……へ? 何!?」
そんな俺の言葉に目を丸くしたのは雄介だ。 そんな雄介の反応に俺がクスリとしたのは言うまでもないだろう。
「だから、早くシてって言ってんだよ……」
今ので何かが吹っ切れたのか俺の方はもう本当に素直に雄介に言うのだった。
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