654 / 854

ー未知ー149

 その言葉だけで、俺の方は一瞬にして顔を赤くするのだ。  これがもし本物の大腸検査で中にカメラ付きのチューブ入れて他の医者に見てもらっているんだったら、顔を赤くすることはないのであろうが、恋人にしてもらうとなると自分の中で話が違って来るのかもしれない。 しかも今は検査ではなく体を重ねているという意識があるんのだから余計にだろう。 「ちょ、え? ゆ、雄介……そ、それだけは……恥ずかしくて……」  と俺の方はマジに、そう雄介に訴えかける。 「何言うてるん? 検査も兼ねてっていうことやねんからなぁ……」  そう言われてしまうと言い返せなくなってしまう俺。  でも恋人にそこを見てもらうのは検査以上に恥ずかしい。 勘弁してもらいたい気持ちはあるのだけど、今の雄介は何だか楽しそうにしているのはなんで何であろうか。  いや、いつもの雄介だったら、俺には無理強いなんてしないのに、今日に限っては……と考えていると、明日は雄介にとって憂鬱な日で、雄介からしてみたら苦手とする美里と話す日だから、今の雄介っていうのは無理強いをして来ているのかもしれない。  そうだ。 今の雄介というのは、明日のことを忘れるくらいにしたいのかもしれないということなのだから。  そこに俺の方は軽く息を吐くと、雄介へと体を預けることにする。  だってそうだろう。 これから俺達っていうのは夫夫になるのだから、相手の事も考えて上げなければならないのだから。 それに今まで雄介は俺にばっか気を遣ってきたのだから、今度は俺がそれを返す番だと思っているのだから。  昔話だって、何かいい事をしてくれた人に、色々と恩返しをしてあげるという話しが多い。  人間、そうやって人を助けて生きていくもんなのだから。  しかしこの部屋には本当に色々な玩具がある。 当然、お医者さんゴッコとかも出来るような物もあれば、コスプレだってあった筈だ。 きっとその中から雄介は色々な道具を探して来るのであろう。  暫くベッドを離れていた雄介だったのだけど、ベッドが沈んだところからすると、どうやら戻って来たようだ。  それに確かにさっき雄介も言っていたのだけど、雄介の方はもう医者としてもプロだ。 もうあまり大腸検査みたいなのは小児科医だから研修医の時しかやったことがなかったかもしれないのだけど、出来るだろう。  そこに変に安心してしまう俺。  それに俺的にも雄介の性格というのは分かっているつもりだ。  だから安心して雄介に体を預けることが出来るっていうもんだろう。  気付くといつの間にか中に入っていた玩具は抜かれていたようだ。

ともだちにシェアしよう!