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ー未知ー175

 その言葉に雄介は一瞬目を丸くしたが、次の瞬間には、 「嫌や……そこだけは、譲れん……」  そう言って再び顔をテーブルへとうつむけてしまう。 「何でだよー! 別に、そこは、強がるところじゃねぇだろ? だって、今日の雄介っていうのは、いつもと違って、こう元気が無いっていうのかな? だからさ……だから……俺から提案してみたんだけど……」  その言葉に、急の雄介は、さっきとは違い、上半身を上げると、 「あー、だからやなぁ……前にも言うたの覚えてへんか? 俺は、望との子を育てたいんやって……だから、姉貴に頼むんやって言わなかったか? 姉貴は俺とは兄弟なんやから、血は繋がっておるやろ? 要はDNAは一緒やねんから、姉貴と望とで、俺たちの子供が生まれるって感じやのに、姉貴じゃなくて、仮に違う人に代理出産を頼んでしまうと、半分しか俺たちの子供じゃなくなる訳やんかぁ……だから、俺は意地でも姉貴に代理出産に関しては頼みたいんやって……」  そう、先程の雄介とは違い、今一度、代理出産について熱く語ってくれる。  いや、俺自身もそれについては雄介と語り合ったのだから、覚えてはいたのだけど、どうしても雄介が憂鬱そうに見えて、そう提案してしまっただけなのだから。 「あー、確かに……分かってるさ……俺と雄介の子供を産みたいって言うのはなぁ。でも、雄介がそんなにお姉さんと会うことに憂鬱な気分でいられると、やっぱ、代理出産の件については他の人に頼んだ方がいいのかな? って思っちまっただけだからさ……」 「あー、そこは、スマン……」  そこで雄介は俺の方に向けて頭を下げて謝ると、 「……スマンなぁ……俺が弱いばっかりに、望に心配かけてもうて……ちょ、元気戻すから……」  そう言って俺の方へと笑顔を見せてくれた雄介なのだが、やはりどこか未だに切なげだ。  ある意味、無理やり作っている笑顔を俺に向けているのだから。  元気戻すって言っても、再び顔をテーブルへとうつぶしてしまう雄介。  そこに軽く息を吐きながらも、ここはもう雄介が復活するまで待つしかないと思った俺は、ある一点を見つめて待っていた。  一人でいる空間っていうのは、本当に今まで沢山あったのだけど、二人だけの空間で、俺たちの間にあまり会話が無かったっていうのは今まで殆どなかったような気がする。  隣に雄介がいるのに、今は俺たちの間にあまり会話が無い時間。  それは一人でいる空間と変わらず、時計の秒針、外で車が走る音、鳥の鳴き声と普段は聞き逃してしまうような音までが、今この静かな空間では聞こえてくるのだ。

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