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ー未知ー176
今は自分の鼓動さえも聞こえてきそうなほどだ。
確かに、美里の代理出産については雄介メインで任せようとはしているが、俺だって話には参加したい。当然、緊張もしているが、雄介に比べたら大したことはないだろう。
人と比べない方がいいと言われるが、自分は自分なのだから。
自分の悩みは大きく感じても、他の人の悩みを聞くともっと深刻だったりする。それでも、自分の悩みが降りかかっている以上、それを比べるべきではないのだ。
「あー! もう、ええわぁ! 悩んだってしょうがないしなっ!」
雄介は急に大声を上げて立ち上がった。
何だかそんな雄介は、急に今までと違う感じがするのは気のせいだろうか。
今までの悩みはどこへ行ったのかと思うほど、彼はすっきりした表情をしている。
雄介がいつもの彼に戻ったのなら、俺も安心できる気がする。
そう思いつつも、美里が来るまでの数時間をどうやって過ごすかが問題だ。
本当に俺たちは時間を潰すのが苦手だ。
「な、望……まだちょっと時間あるし……気晴らしにレストランとか行かへん?」
「……へ?」
その突然の提案に、俺は裏声を出しながら雄介を見上げる。
「……レストランって?!」
「確かに、今ご飯食べたばっかりやけど、たまにはなぁ、楽したい時だってあんねんって……」
俺はハテナマークを浮かべながらも、
「あ、ああ……雄介がそうしたいなら、俺は別に構わないけど……?」
納得できないまま、首を傾げながら承諾する。
レストランで食事をするのは構わないが、急に雄介がそんなことを言い出した理由が気になる。
とりあえず気にせず、出かける準備を始める、俺と雄介。
簡単に着替えると、雄介と俺は外に出る。
「さっきはレストランって言ったけど、ファミレスの方でええやんなぁ?」
「あ、ああ……」
雄介の言葉に俺はそう返事をする。
「こうな、ファミレスでのんびりとした時間を過ごして、ほんで、姉貴と話すっていう感じでええか?」
「あ、ああ……まぁな……」
未だによく分かってない俺は、そう曖昧な返事をしておく。
少し前を歩く雄介。その様子からすると、空元気というか、落ち着きがないようにも思えるのは気のせいだろうか。
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