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ー未知ー189

 その美里からの質問に対し、俺と雄介は視線を合わせた。そう、これは美里に質問されることを予想の範疇だったからかもしれない。そして、雄介は口を開く。 「もし、病気がちな子供が生まれてきた場合、俺が専業主夫になって、望に仕事をしてもらうつもりですけど……いや、むしろ、俺は望には仕事をしてもらって、俺は専業主夫として子供の面倒を見るつもりですけど……」 「『ですけど……』ってことは、まだ吉良先生と話をしてないってことなのかしらね?」  本当に美里という人物は、確かに雄介が苦手とする人物なのかもしれない。そうやって気になったところを見つけると、すぐに突っ込んでくるのだから。  そこに俺も割って入る。 「いや……話し合いをしてなくても、俺はそのつもりでいましたよ。経済的なことに関しては俺が働けば十分ですしね。子供が大きくなるまで、雄介には専業主夫としていてほしいんです。私の場合、小さい頃、親が外国に行ってしまっていたんで、親が家にいない寂しさを知っているので、そこはやはり雄介には家にいてほしいと思うんです。それに、俺は雄介から愛情というのを教えてもらったんですよ。だから、雄介は十分に子供に愛情を教えてあげられると思いますし、今まで俺はずっと雄介と一緒に住んできたので、家事も任せられますしね」  そこまで雄介について俺が美里にプレゼンすると、美里は雄介のことを目を見開いて見ていたようだ。 「え? あ、あの……雄ちゃんが!? 本当に?」  どうやら美里からすれば、そんな雄介が信じられないといった様子なのかもしれない。 「だって、雄ちゃんは小さい頃、ドジばかりしてたのよー。しかも、いろいろと弱くて、ガキ大将みたいな子によくいじめられて私に泣きついてきたのに……」  本当に親みたいな美里の言葉とその話に、俺の方は笑いそうになってしまっていた。  確かに美里の話が本当だとすれば、今の雄介とは雲泥の差だからなのかもしれない。  そんな話をする美里に、雄介は顔を俯けてしまっていた。流石の雄介もその話は恥ずかしかったのであろう。こう膝まで握り締めてしまっていたのだから。 「そ、そんな昔の話はいいとして……」  どうやら雄介は今の話をとりあえず流そうとしているように感じる。  俺の方はちょっと昔の雄介の話を聞いてみたいところなのだが、今はそれどころではない。 「み、美里さん……とりあえず、昔の雄介の話は後にしてもらってもいいですか? 今は……」  とちょっとそこは遠慮気味に言う俺。

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