「家賃に琉斗の学費。それに、その他生活に必要なお金って色々とかかってくるのだけど、本当にあなたたちに、それを全部任せても大丈夫なのかしら？」 　そう真剣に言ってくるということは、それを完全に重要視しているように思える。 　確かに生活していく上でお金は重要だ。しかも美里の場合には旦那さんがいないのだから、余計にそうなのかもしれない。 　いや、確かに俺たちの場合には他のサラリーマンに比べたら経済的余裕はあるのだけど、それでも他人に経済的に支援するのは違うのかもしれない。でも、この問題をクリアしなければ、俺たちは美里に代理出産について頼むことができないだろう。 　そこだけは雄介がしっかりと美里に説得してほしいところでもある。 　俺の方は今までにない緊張感を感じているが、雄介の方はもっと緊張しているようだ。現に、完全に雄介は顔を俯けてしまっているのだから。 　雄介の答え次第では、きっとこの話は無かったことになる。だから今のこの空気は緊張感に包まれているのだ。 　そして、雄介は顔を上げると、 「経済的な面では、俺が何とかサポートしますよ」 　ただその一言を言う雄介。しかも真剣な顔でだ。 　確かに雄介も、消防士だった時代と医者になった時代で、相当貯えがあるだろう。雄介は大きな物やブランド物を買うという訳ではなかったのだから。そして、その中から少しずつ俺の親父に借りていたお金だって返していた。 　本当に雄介の場合には、いつもごく一般的な買い物しかしていなかったと思う。だからほとんどが貯金に回っていたのではないかと思う程だ。 　しかし雄介のその言葉の後が続かない。再び俺たちの間には秒針の音だけが聞こえるくらい静かになってしまった。 　その間も震えるくらいの緊張感に、益々俺の心臓の鼓動は波打ち続ける。 　きっと美里もその間に色々と考えてくれているのだろう。 　それから暫くして、美里が口を開く、 「……雄ちゃんは、本当に、それで、いいの？」 　その美里の言葉に雄介は顔を上げると、 「そりゃ、当たり前のことですからね……。だって、俺たちが姉貴に代理出産を頼んでいるんですから、それくらいのサポートができなくてどうするんですか？　むしろ、経済面でのサポートも含めて、今は姉貴にお願いしております」 　そこまで言う雄介に、俺は心の中で拍手を繰り返すのだ。まさか雄介がそこまで考えていなかったからなのかもしれない。 　確かに雄介の言う通りだ。俺たちは美里に代理出産を頼んでいる立場なのだから、経済面から生活面まで何でもサポートするのが当たり前なのだ。