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ー未知ー192

 本当に今までにはないような真剣な表情で、雄介は美里のことを見つめる。その瞳はいつもの雄介らしく優しく、本当に雄介が心の底から美里に頼んでいるのが伝わってくるくらいだ。  きっと美里にもそれが伝わっているのだろう。  美里が軽く息を吐いたのだから、良い意味で受け取ったのだろう。 「……分かったわぁ。雄ちゃんの気持ち……」  そこで言葉を止めてしまう美里。  その言葉だけでは、まだ結果的にはどうなのか分からない。  むしろ今が今日一番の緊張状態なのかもしれない。 「そこまで考えてくれているなら……私が雄ちゃんと吉良先生の子供の代理出産を受けてもいいわよ」  その美里の言葉で、今まで俯き加減だった俺たちは一気に顔を上げるのだ。 「ほ、ホンマにホンマか?!」  雄介は今までの緊張感から解放されたからなのか、興奮状態でそう問うのだ。  それをとりあえず俺は押さえ込んで、 「ありがとうございます!俺たちのために、本当にそこまでしてくださって、本当にありがとうございます!」  俺は心から美里に感謝したかったから、雄介を押さえつつ頭を下げるのだった。  それと同時に雄介も美里に向かい頭を下げるのだ。  その姿に安心する俺。  さっきまでの興奮状態だった雄介を抑えられたことに安心したのかもしれない。 「ホント、二人の本気さっていうのかしら……そういうのが私にちゃんと伝わってきたしね。それに、今は二人ともお医者さんですし、私の体を任せられるっていうのもあるのかしらねぇ。それに、今の二人なら、何か試練があっても乗り越えることができると思うの……それに、あんなに可愛かった雄ちゃんが、ここまで言えるようになってるとは思ってなかったわぁ。きっと、生まれてくる子供も、雄ちゃんや吉良先生に出会えて良かったと思えると思うのよね」  そこまで言うと、美里は俺たちに向けて微笑むのだ。  再び安心したような表情を見せる俺たち。 「吉良先生も、本当に雄ちゃんでいいのね?」  その質問に俺は何も考えず、素直に、 「はい!」  と大きく頷くのだった。  雄介の前でこんなにハッキリと『雄介のことが好きだ』と頷いたのは、ある意味初めてなのかもしれない。  これまでは何かと誤魔化していたような気がするからだ。  だけど今日のことについては、今まで以上に雄介がかっこよく見えたのと、いざという時には頼れる存在になっていたことに惚れ直したのかもしれない。

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