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ー未知ー201

「私の方こそ、宜しくお願いしますね」  と、美里の方も俺へと頭を下げてきた。  しかも、本当にこれからは美里と俺は義理の兄弟になる訳だし、色々と長い付き合いになるのだから。  しかし、今までずっと黙っていた雄介は、もしかしたら今までの俺たちの言葉を聞いていたのかもしれない。  雄介の方へと視線を向けると、ソファの肘掛けに肘を掛けて、脂汗みたいなのが出ているのは気のせいだろうか。  それに気付いた俺は、 「また、頭が痛いのか?」 「え? あ、いや……大丈夫やって……大したことないから……」  言葉ではそう言っても、額に汗をかいているのだから、これは外から見ている人間でさえも分かるくらいに、雄介は具合が悪いのだろう。しかも、人間って無意識に痛いところを押さえてしまうものだから。 「いや……大丈夫っていうレベルじゃなさそうなんだけどな……そういう時は、無理しないで言ってくれよ。だって、俺たちはこれから夫夫になるんだろ? そういう遠慮は要らないからさ」  その言葉に、雄介の方は目を丸くしたが、それを聞いて安心したのか、息を軽く吐いて、 「……そうやったな。俺たちは夫夫になるんやったな。お互いのこと、信じ合わないでどうするんやろ? ほな……望……俺、頭痛いんやけど……」 「ああ!」  俺は雄介のその言葉に頷くと、薬箱を取りに向かった。  久しぶりに薬箱を開ける俺。  この中には、本当に色々な薬を入れておいた。しかし、この薬箱というのは、埃が被ってしまっているようにも思える。  きっと朔望たちは使わないのだろう。  俺はその薬箱の埃を拭くと、薬箱の中から頭痛薬を取り出した。  しかも、その頭痛薬も消費期限がギリギリであった。  ま、ギリギリなのだから、早く使ってしまった方がいいだろう。  しかし、朔望たちは薬を使わないのだろうか。それともここにあることを知らないだけなのだろうか。それとも何処か痛くなった時に薬は使わないのだろうか。そこは分からないのだが、全く使われている気配はないのだから。  俺は薬と水を雄介へと運んでくると、雄介はそれを飲んだ。  しかし、雄介は海で漂っていた日以来、本当に頭痛の頻度が増えたように思える。  だけど、俺たちは一回、ちゃんと病院に行った。その時は確かに異常は認められなかったが、『もしかしたら、数年後に何かあるかもしれない』と新城は言っていた。それは確かに残っている。  まさか本当に海の中を漂った時に、何かあったのかもしれない。意識が無い時に岩場に頭を打ちつけていたとか、意識が無い時間が長かったとか、やはり春坂にいる時に今一度雄介の具合を調べてみた方がいいのだろう。寧ろ、雄介に検査してもらって、自分で診断した方がいいんじゃないかと思えるほどだ。

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