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ー未知ー204

 そこにホッとするのも束の間。雄介の体の中で、今どんな事が起きているのであろうか。これだけ頭痛が頻発しているのだから、やはり体が異常をきたしているのは間違いないだろう。ここは定期的に雄介のことを病院に連れて行った方がいいのかもしれない。  一応、俺だって分野は違うものの医者ではある。それに前に春坂病院で働いている時は確かに外科医をしていたのだが、島で働くことが決まってからは他の科の勉強をしてきたのだから、外科医の時よりかは知識がついたということだろう。 「とりあえずさ、美里さんとの話はついたみたいだから、また明日にでも病院に行ってみるか?」  そう雄介の頭を撫でながら言う俺。 「え? いや……大丈夫やろ? だって、薬で痛くなくなるんやからなぁ……」 「え? あ……」  雄介がそう言うんだったら、意外に大丈夫なのかもしれない。いや、そこは二人とも医者的には分野が違うのだから、判断しづらいところだ。 「あのさ……海で彷徨っていた時に、お前、頭を何処かに打つけた覚えあるのか?」 「え? あー、分からへんなぁ? もしかしたら、望の言うとおり、意識失っている途中で頭や体を打つけている可能性っていうのはあるのかもしれへんな」 「……ま、だよなぁ? でも、前回、病院に行った時には異常は感じられなかったんだよな?」 「ま、そういうことやんな……」  そう言うと、雄介の方は薬のおかげで痛みが取れたのであろう。その場に座り始めたのだから。 「ほな、飯でも作るか?」 「あ、ああ……それは、いいんだけどさ、もう大丈夫なのか?」 「そりゃ、もう……頭さえ薬で痛くなくなってしまえば、大丈夫なんやしな」 「あ、ああ……確かに、それは、あるな……」  若干、雄介に心配しつつも、俺の方はソファへと寄り掛かる。そして雄介の方は、相変わらずキッチンの方へと向かうのだ。 「今日は、ピーマンの肉詰めにでもするか?」 「あ、ああ……別に、俺の方は雄介が作ってくれるもんなら、何でも食べれるからさ……」 「それは、何? ええ方にとってもええんか?」  そう半分はニヤけたように言ってくる雄介に俺の方は、雄介が何を言いたいのかが分かったのか、気持ち顔を赤くしながら、 「べ、別に……そういう意味で言った訳じゃ、ねぇんだからな……」  と急にしどろもどろで反撃してしまっていた。 「ま、ええから、ええから……ホンマ、俺は、望んこと分かっておるし……」  そう意味ありげに言いながら、本格的にエプロンを付け、料理を始める雄介。  しかしたまにこうして昔の俺が出てしまうのは仕方がないことだろう。そんな雄介との会話も今は幸せを感じるくらいなのだから。

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