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ー未知ー207
そんな俺に気付いてくれたのか、雄介の方も笑顔になって、
「ほな、どうする? コース料理にでもしとくか?」
「え? あ、ああ……だけど、コース料理にすると入らなくねぇ?」
「望はそうなのかもしれへんけど……俺の場合はお腹に入んで……」
そう言って高そうなスーツのジャケットを捲り、お腹を摩る雄介。
そんな雄介が可愛くてというのか、面白くて思わずクスリとしてしまっていた俺。
そんなおどけた感じな雄介をゆっくりと見たのは久しぶりなのかもしれない。
「ほな、単品で料理食べるか?」
「あ、ああ……俺の方はそんなんでいいよ……」
「ほな、俺もそうすっかなぁ?」
俺達の方は適当に料理を選ぶと、それを注文し、再び会話を始めるのだった。
「前に来た時は、俺が遅れて来てもうたけど……今日は、二人一緒に来たしな……」
そう言った後に雄介の方は、何かを思い出したのか、
「な、ワインか何か飲むか?」
「あ、ああ……それは、いいんだけどさ。どっちかが車を運転しなきゃなんないんだから、どっちかがっていうなら、飲まない方がいいんじゃねぇのか? そしたら、ワインは買って家で飲めばいいしさ……」
「ほんだったら、家で飲めば良かったかなぁ?」
『失敗したわぁ……』という表情を浮かべる雄介。
「特別な日なんだから、こういうところで食べるのもいいんじゃねぇのか? ワインとかっていうのは、二の次でもいいんだしさ……二人で楽しめればいいんじゃねぇのかな?」
「……ん?」
と一瞬、不思議そうな表情をした雄介だったのだが、直ぐにそれを戻し、
「ま、確かに、望の言う通りやんなぁ……。今日は俺達にとって特別な日なんやからなぁ……」
と急に納得してくれたようだ。
本当に今日の俺たちっていうのは、いつも以上にワイワイとしているような気がする。
そして料理が運ばれて来て、それを食べ終えると、今度はワインとかアルコール類ではなく、スパークリングジュースを選び、そこで乾杯をする俺達。何だか外の光も俺達の事を祝杯しているようにも思える。
それからは俺達からしてみたらメインと言える、婚約指輪をはめるのだ。
俺は雄介の左指の薬指へとはめ、雄介は俺の左指の薬指へと婚約指輪をはめるのだった。
俺達の場合、女性ではないのだけど、気分的に婚約指輪で幸せな気分になれたようにも思える。
そしてお互いに見つめ合い、微笑む。
本当にそれだけが俺達からしてみたら平和な時なのであろう。
あんなに沢山の困難に立ち向かって越えられて来たからこそ、今の俺たちというのはあるのだから。
「望……俺の恋人になってくれて、ありがとうな……」
「いや……俺の方も、雄介が恋人になってくれてなかったら、こんなに幸せな時はなかったんだよな。って思うよ……」
たまには愛の言葉を語り合ってもいいのではないだろうか。それこそバチなんか当たりやしないと思う。だって俺達はその分、頑張って困難乗り越えて来たのだから。
ここで雄介と唇くらいは軽く交わしておきたかったのだけど、まだ流石に人前では出来る訳もなく、とりあえず諦める俺達。
そこからは本当に二人だけの幸せな時間を過ごし、展望レストランを後にする。
今日という記念日なのだから、当たり前の事だけど、家に帰宅してからは、二人だけの甘い時間を過ごした。
こんな幸せな時がいつまでも続きますように……と、そんな願いは俺達には出来ないのであろうか。これからもまた神様に与えられた試練を越えていかないといけないのであろうか。
未来の事は、まだまだ分からないことだらけだけど、今という時の中で、雄介と一緒にいられているのなら、それはそれでいいのかもしれない。
【ー未知ー】END
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