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ー閃光ー1

 あれから暫く、雄介の方は頭痛もなく、穏やかな日々を送っていた。  美里には代理出産のことを頼んで、検査も無事に終わった。俺と雄介と美里で赤ちゃんを育てて行こうという計画が始動された。そう、もう美里のお腹には俺たちの子供がいるということだ。  俺たちは、前に雄介と話していた通り、美里が住んでいるアパートの隣にあるマンションを借りることにした。そう、そん時はたまたまアパートに空きがなかったのだから、そこは仕方がない。とりあえず隣にあるマンションが空いていたのだから、それで十分なのかもしれない。  いや、寧ろ、隣り過ぎても俺たちのプライベートのことが丸見えの状態に近いのだから、気持ち的には少し離れていた方がいいということだろう。  俺たちも、たまにはイチャイチャなことやそれ以上のこともしたいのだから、その音が隣に聞こえてしまっても困る。それに、思春期の琉斗もいる。だから、そこは余計に気を使うところなのかもしれない。  今まで一軒家で育ってきた俺からすると、マンション暮らしは初めてのことだ。  今はマンションの三階に住んでいる。  俺はエレベーターを使いがちだが、雄介の方は毎日のように階段を利用していると言っていた。そして当初の予定通り、雄介が家に残り仕事をしないで、専業主夫状態で、たまに美里の様子を見に行くということが実行されているようだ。俺の方は再び春坂病院で働いている。  今まで大変な毎日を送っていたからなのか、本当に今が平和過ぎて、幸せもいっぱいなのかもしれない。  夕飯だって、雄介が毎日のように作ってくれているのだから、俺が仕事から帰宅して来ると、テーブルの上には料理が用意してある。  ある意味、本当の夫夫っていう感じだ。  そして夕飯を食べている時に、照明の反射でキラリと光る結婚指輪もまた幸せの度合いを演出してくれる。  婚約指輪もそうだったけど、結婚指輪だって、俺たちの場合は本当にシンプルな指輪で、シルバーリングにした。  女性だったらきっとそこに光る石が欲しいのだと思うけど、俺たちからしてみたら、二人が結婚している証しだけが欲しいのだから、シルバーリングで十分だろう。  帰宅してきてからは、雄介と会話する時間もある。  俺の場合には、割と昼間だけ仕事する時間が多いからなのかもしれない。それに、人員がいればそんなに大変な思いをして働かなくてもいいのだから、親父の場合には、たくさんの人員でどうにかしてくれているのだろう。  だけど、そうした中でも自分が担当する患者に急変があれば病院へと向かうのだから、春坂病院で働いているなら、ゆっくり出来そうで出来てないのかもしれない。

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