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ー閃光ー10
そこに俺もきっと琉斗だって満足したような表情を浮かべていたようにも思える。
そこは自分がリクエストした料理だったからであろう。
確かに雄介は琉斗が小さい頃に琉斗によく作っていたメニューの一つだ。
あまり変わらない美味しさに、俺たちから笑顔は消えなかったように思える。さっき俺に見せた琉斗の切ない表情を除いて。
雄介の前では、琉斗だってさっきみたいに切ない表情は見せないものの、俺にはそれを見せている。それはその気持ちを雄介には絶対に言えないからであろう。他人の俺なら言っても構わないだろうと思ったから、きっと琉斗は俺に言ってきたのだから。
俺の心の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。
さっき琉斗と二人きりにならなければ、そんなことを聞かなくても良かったのであろう。
さっきの琉斗は確実に雄介のことが好きだっていうのを俺に言っていたのだから。
「琉斗って、今部活何してるん?」
雄介はその事実を知らないのだから、普通に琉斗と会話ができるのであろう。
本当にごく当たり前の質問をしていた。
「あー、部活? あー、普通にってところかな?」
「ん?」
その琉斗の言葉に雄介は、頭にハテナマークを浮かべているように思える。
「あー、反抗期やからか?」
多分、雄介の独り言なのであろうが、全くもって聞こえている独り言に琉斗が反応し、
「……ま、そこは、とりあえず、適当にやってるっていう感じだしさ……」
「あ、そうな……。んじゃ、彼女とかはおんの?」
そう何も気にしてないような雄介はめちゃくちゃな笑顔で聞くのだ。
だが、その雄介の何気ない質問で、一瞬この場が凍りついたように思える。
そりゃ、そうだろう。俺はさっき琉斗からそれを聞いているのだから、余計にこの空気感が分かってしまう。
「……雄介叔父さん……俺が反抗期だって分かってるんだったら、それは愚問っていうやつなんじゃないのかな?」
「あー、そやったな……」
さっきまでは、自分の親への反抗期だって言っていたのだけど、本当に琉斗の場合には反抗期ど真ん中っていう感じなんだろう。
素直なところは素直なんだけど、言いたくないことに関しては、本当に黙ったままなのかもしれない。
「ま、思春期だし、反抗期だし、それは言う言わないは自分の自由やねんけど……人に迷惑だけは掛けんなや……。ま、言いたいのはそれだけやんなぁ……後は姉貴にだけは心配掛けんなや……。琉斗やって覚えてんねんやろ? 姉貴が琉斗が小さい時に入院してたこと……。体に異変が出てる時っていうのは、体が休みたいって言うとる時やねんから、姉貴は昔そうなったんやと思うで……また入院してほしくないんやったら、絶対に姉貴を心配させるようなことはしないってことやね……。ま、琉斗やったら、大丈夫やと思うねんけど……」
そう琉斗に向かい笑顔を見せる雄介。
今雄介は琉斗に真剣になって、その言葉を何回も繰り返していたように思える。雄介からだって何だかんだ言ったって、美里は大事な存在なのだから、琉斗にだって大事な存在だろう。だから雄介はそう言ったのかもしれない。忘れないように同じことを言ったということだ。
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