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ー閃光ー11
だが琉斗の方は、今の雄介の言葉さえも、「つーん」とした態度を取っていた。
これが本当の反抗期っていうところなのであろう。
そんな琉斗に雄介の方は軽く息を吐く。
確かにほとんどの思春期の子供には反抗期というものがある。
だけど逆に俺や裕実にはそれがなかった。俺の場合には近くに両親がいなかったっていうこともあるのだが、裕実の場合には親から虐待を受けていたのだから、反抗する気もなかったということなのであろう。
だから反抗期がない方が、心配になるっていうのは家庭に問題があるからこそ反抗期がないままで大人になるということなのだから。
「じゃあさ、僕からも質問いろいろしてもいい?」
そう急に前を向き、笑顔になる琉斗。だがその笑顔っていうのは、もうこう何か怪しい雰囲気を醸し出しているようにも思える。
そんな琉斗に俺の方は身構えてしまっていた。
「雄介叔父さんと吉良先生って、恋人同士なんでしょう? 二人が出会ったのはいつ、どこでなの?」
そう、そういうことに関しては興味あるお年頃なのであろうか。そんな琉斗からの質問に俺と雄介は視線を合わせるのだった。
そして雄介は一瞬で琉斗の方へと視線を向けると、今度は天井の方へと視線を向け、
「そやな……? 望が働いている病院で、もう、十年以上前に会っておったなぁ?」
「やっぱ、そうだったんだねぇ。僕が小さい頃に吉良先生と雄介叔父さんは会ってたんだ。だってさ、僕が小さい頃、吉良先生に文句言ったことあったよね? 『吉良先生が、僕の雄介叔父さん、取ったんだ!』ってね。その時は、お母さんが入院していたから、和也さんに『お母さんの病気は吉良先生に治してもらうんだけど、そういう風に言っていいのかな?』みたいなことを言われてさ、その時は、とりあえずそれ以上は言わなかったんだけど、今はそういう事じゃないんだよね……だから……」
そこまで言うと琉斗の方は、軽く「フフ」と笑い、俺たちのことを気持ち的に睨むようにして見てくるのだ。
「さっき、吉良先生にも言ったのだけど、僕は、小さい頃から雄介叔父さんのこと好きだったんだよね。だって、優しいし、玩具買ってくれてたし、料理もこうしてリクエストしたら作ってくれるしね。だけど、僕と雄介叔父さんでは『甥っ子と叔父さん』の関係だから、百パーセント恋人同士とかになるっていうのは無理だったから、僕の方は諦めなきゃいけなかったんだけどね」
その琉斗の言葉に、俺と雄介は、寒気がするくらいに怖かったのかもしれない。
それに俺に完全に恨みを持っているっていう感じなのだから。
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