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ー閃光ー13
そこに怯んだように見えたのは、むしろ、雄介の方だ。
いきなり琉斗からの無理難題に困ってしまっている雄介。いや、俺だってこの問題は関係者でもある。
だけどこの俺が何かアドバイス的なことを言えるわけもなく、二人して完全に琉斗のその無理難題に固まってしまっていた。
「……ほな、どうしたらええの?」
そう言う雄介に、何かこう琉斗の方が勝ち誇ったように思える。
こう何か琉斗には策みたいなのがあるというのであろうか。まさかと思うのだが、今日ここに来た狙いみたいなのは、実はこの話をしに来たっていうことだったのであろうか。
そう思うと、琉斗は子供なりの恐ろしい子供だって思ってしまう。
「雄介叔父さんが、僕のことを抱いてくれたら、雄介叔父さんのこと諦めてあげる。って言ったら?」
その琉斗の言葉に再び俺たちが凍り付いてしまったのは言うまでもないだろう。
「そ、それは……さすがに、な……」
そう完全に言葉を濁すように言っている雄介。
そこははっきりと琉斗に言っていかないといけないところだと思うのだが。親戚だから、俺たちからしてみたら、琉斗は子供なのだから、もしかしたらそんなに強く言えないところなのかもしれない。
だがしばらくして雄介は、
「あー! スマンっ! ホンマに琉斗が俺の事を好きになってくれているのは嬉しいねんけど……今は、本気で望の事が好きやし、結婚もしておるし、琉斗とは親戚やし、望が目の前におんのに、俺的には絶対に琉斗にはそんな事出来へんっ! 悪いねんけど、今日はもう帰ってくれへんか? 俺らのせいで姉貴が今大変だっていうのも分かっとるし……琉斗のところには散々俺らが迷惑かけておるのも分かっとる……せやから、琉斗が俺たちの事を困らせに来ているのも分かっとる……そういうことやろ?」
その雄介の言葉に、俺も琉斗も一瞬時が止まったようにも思える。
でも、一体、今雄介が言っていた意味っていうのはどういうことなんだろうか。俺からしてみたらさっぱり意味が分からなかったようにも思える。
しかも琉斗の場合には瞳孔まで開かせていたのだから、気持ち的に雄介の言葉に焦っているという証拠だろう。そして瞳までも完全に宙へと浮かせてしまっているのだから。
「ほらな……そういうことやねんやろ? ホンマ、ゴメンなぁ……。俺らのせいで、琉斗のお母さん取ってまってるみたいやし……そやな……確かに、俺らが悪いんやって……自分たちの子供のために、琉斗のお母さんを利用してるんやもんなぁ……そりゃ、琉斗が俺らを困らせたくなるに決まっとるやん」
再び雄介の言葉に、俺と琉斗は目を丸くさせていた。
本当に雄介っていう人間は凄いと思う。ここまで子供についての心理学というのか、心理について詳しくなってきているとは思ってなかったことなのかもしれない。それに琉斗が完全に目を見開いて反撃してこないところをみると、完全に雄介が言っているまんまっていうことなのであろう。
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