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ー閃光ー20

「……へ? でもな……」  そう言う雄介に、俺は一瞬ため息をついたが、そこは雄介らしいと思いながら、今日の俺はなんだか雄介に説教じみたことを言い始める。 「だからさ、思いっきり、俺の前でなら自分を出してもいいって言ってんだろ? 雄介が謙虚な性格なのは分かってる。でも、ホント、他人のことについては色々と分かってるくせに、自分のことになると、ホントっ! 分かってないっていうのかなぁ? ま、確かに、そこが雄介のいいところではあるんだけどさ。とにかく、俺は雄介が毎日のように料理を作ってくれていることに感謝してるんだよ。分かったな……!」  なんだか今日の俺は、お酒も飲んでないのに、ここまで自分を雄介の前で出したのは初めてなのかもしれない。  むしろ、俺も人のことを言えないんだろうが、今はとりあえず雄介に言いたいことを言うときだから、それについて続ける。 「あー、そうだな……じゃあ、雄介風に言ったら分かるのか? 雄介って、小さい頃、きっと父親やお姉さんに、『男の子なんだからもっとしっかりしなさい』とか言われてたんじゃねぇのか? それが色々とプレッシャーみたいになって、いろいろ言われたからこそ、自分が大人しく『はいはい』って言ってればどうにかなると思ってたんだろうな。だから大人になった雄介は、こんなふうに謙虚になってしまったんじゃねぇのか?」  そう言うと、雄介は目を丸くしながら俺を見つめていた。  むしろ、俺の推測が当たっていたということなのだろう。だから、そんな表情を今雄介はしている。 「なら、俺の前ではもうそんなことをする必要なんてないだろ? ありのままの雄介でいればいいんだからさ……」  そこで笑顔で言う俺。すると雄介も笑顔になって、 「そうやな。確かに、望とは結婚したんやから、謙虚でいる必要はないんかもな……。望……ありがとうな。なんていうんかな? 今まで、親父や姉貴たちが強かったもんやから、うまく自分を表に出すことはできへんかったけど、確かに望の言う通り、これからは望の前では素を出していったらええんやもんなぁ。ほんま、そこは、心の底から望と結婚して良かったわぁ……って思うところやわぁ。望が素の俺を引き出してくれそうやしな」 「あ、ああ……そうだな。とりあえず、もう少し遠慮とかしなくていいんじゃねぇのか?」 「ま、そやな……」  今日はなんだか、雄介のことを説教してみて良かったように思える。俺たちの仲がまた深くなったと感じるからだ。

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