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ー閃光ー21

 それに夫夫の関係っていうのは、やはり平等でなければならないと思う。  俺からしてみたら、それが理想の夫夫だからだ。  奥さんが強い、旦那さんが強い、それでは夫夫平等ではないだろう。  だから、雄介にはそんなに謙虚にならなくて、謝る必要性っていうのはないと感じたのかもしれない。  俺は、今一度、 「あのさ、夫夫っていうのは、平等がいいだろ? なら、なおさら、雄介にはあまり悪いことじゃない限り謝ってほしくないっていうのかな?」  そう俺は雄介に、ちゃんと伝わるように笑顔で言うのだ。  それに雄介も気付いてくれたのか、 「確かに、そうやったなぁ。ってか、俺も望と一緒で、夫夫になったんやから、平等の方がいいっていうのは分かるような気がするわぁ。むしろ、俺も望と一緒の考えっていうんかな?」  そこに一致する俺たち。  今日はちょっと真剣な話を雄介としてみて良かったと思えた瞬間だったのかもしれない。  ちょうどその頃には食事を終え、食器を流しへと運ぶ。  以前の俺たちは、食事は雄介が作って、洗い物は俺がやっていたけど、今は俺が働きに出て、雄介が家のことを全部やってくれている専業主夫だからなのか、食器を洗うのも雄介の仕事になっている。  そして今、雄介は食器を洗い始めていた。そんな姿を後ろから見ている俺。  今日は何だか急に雄介のことが愛おしくなってしまったからなのか、雄介の後ろから抱きしめる俺。 「へ? どないしたん?」  当然、雄介はそんな声を上げるだろう。 「あ、ああ……ちょっとな……たまには、俺がこういう風にしてもいいんじゃねぇのか?」 「え? あ、まぁ……そうなんだけどな……」  さすがにちょっと戸惑い気味な雄介に、俺は可愛く感じてしまったのだが、それでも俺は雄介の後ろから抱き締めていた。  雄介と結婚もしたし、これだけ雄介と一緒にいるのだから、大分素直な行動ができるようになってきたと言っても過言ではない。ただ雄介がそのことに慣れていないだけなのだから。 「それに、仕事から帰って来て、こう俺だって、雄介に甘えたい時だって、あるんだからよ……」 「え? あ、ま……そやけど……?」  そこで雄介は急に何か俺の言葉が引っかかったようで、 「あー、何か……仕事であったんか?」 「……ん?」  逆にその雄介の言葉に俺は雄介のことを見上げる。  そう言われてみればあったのかもしれない。  今の職場の環境っていうのは、前と違って、コンビを組んでいるのは和也ではないのだから、自分では何か足りないと感じているのだろう。そして和也のような相手ではないのだから、前のように友達感覚でいられない相手に俺が苦手意識を持っているのかもしれない。

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