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ー閃光ー31

 そう言われてしまえば、そうなのかもしれない。  本当に美潮という人間とは友達ではなく、仕事での仲間という括りでいいのだろう。そう考えると、和也以上に別に接する必要はないと思い、再び深い息を吐く。  人に愚痴を言ったことで、自分の中でスッキリしたのかもしれない。  雄介は俺のことを微笑みながら見てくれている。 「ん? どうした?」 「ん? あー、なんかなぁ……こういう時が、自分でも幸せ過ぎてなぁ……もしかしたら、そんな雰囲気が今の俺の顔に出てるのかもしれへんなぁ?」  それだけでは雄介が言いたいことが分からず、俺は聞き返す。 「ん? どういう意味だ?」 「あー、なんていうんかな? 俺たちって、今まで忙しかったやろ? せやから、望とこうのんびりとした会話ができていることが幸せっていうんかなぁ?」  そのゆったりとした話し方からすると、確かに雄介から幸せオーラみたいなのが出ているように思えてくる。  確かに雄介の言う通りなのかもしれない。  俺たちは今まで本当に何かと忙しかったから、のんびりとした空気や雰囲気がなかったので、今のこの時が幸せに感じているのかもしれない。  さっきだって俺が仕事の帰りに渋滞で引っ掛かっているときに、雄介は迎えに来てくれたのだから。いや、それは前にもあったのだけど、今の雄介は完全な専業主夫だから、そういった時間に余裕がある時の行動なのだろう。  片方が仕事をしていないと、本当にゆったりとした時間が流れているように感じる。  きっと雄介の心に余裕があるからだろう。  いや、雄介の場合、元から心に余裕があったように思えていたが、今の方がもっと心に余裕ができているという証拠だろう。 「そうだな……。雄介が専業主夫になってくれたからなのかもしれないな……」  俺は雄介に素直な気持ちを打ち明ける。  今までの俺は素直になれなかったけど、もう雄介とは何十年も一緒にいるわけだし、雄介という人間性も分かっている。それに前に約束したのだから、素直に言えるところは言った方がいいだろう。  それでも俺は照れ隠しのために、食べたお皿を流し台へと運びながら言う。  そんな俺に、雄介は再び微笑んでいるようだ。  確かに俺からは今の雄介の表情は見えないけど、何というのか雰囲気で、オーラで見えているのかもしれない。

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