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ー閃光ー32

 雄介に言われて、確かに今この時は幸せな時間なのかもしれない。  本当に今まで毎日のように仕事に追われていたから、こうして毎日家でゆっくりと食事ができることが、こんなに幸せな時だとは思っていなかったのだろう。  この後は、ゆっくりとお風呂に一緒に入って体を休ませるだけだ。  俺は流し台にお皿を置いた後、お風呂場へと向かう。  そう、今度はお風呂に入る番だ。  お風呂の準備が終われば、あとはお湯を溜めてからお風呂場へと向かう。  本当に最初の頃は雄介とお風呂に入ることさえ躊躇っていたのに、今では躊躇いもなく一緒に入れるようになった気がする。  そして、いつものようにたわいもない会話をしながらお風呂から上がり、今度は寝室へと向かう。  その途中、雄介が、 「ちょ、スマン……」  そう言って急に廊下でうずくまる。 「……え?」  先を歩いていた俺は、その雄介の声で後ろを振り向く。 「どうした?」  俺もしゃがみ込みながら雄介に言う。 「あ、いや……な、何でもあらへん……」  その言葉に一瞬、俺は難しい顔をしたが、 「あのさ、雄介? 前に俺にも話してくれただろ? それに、今の俺たちは夫夫なんだから、何かあったら話すのが当たり前なんじゃねぇのか?」 「あ……そうやったな……あ、あんなぁ……また、頭が痛いねんって……」 「また頭が痛い?! あ! そうか、風呂で逆上せてしまったってことか。なら、ベッドまで早く行こうぜ」  俺はそう言って、雄介の腕を支えながら寝室へと向かう。 「あ、確かに……風呂で逆上せただけなのかもしれへんなぁ……」  そう言って、雄介はベッドに横になる。  さっき廊下では、一瞬冷や汗だかお風呂上がりだかで汗が出ていたように思えたが、ベッドに横になって少し落ち着いたようだ。 「頭痛薬持って来た方がいいか?」 「あ、ああ……そうやなぁ……」  そう反応してくれたので、俺はキッチンの棚の上に常備している薬箱を取りに行く。  薬箱の中に入っている頭痛薬を見つけると、水と一緒に雄介がいる寝室へ持って行く。  頭痛なら薬を飲んでゆっくりしていれば治るだろう。  でも、雄介は確か偏頭痛持ちではなかったような気がする。だけど、人間なのだから、年を取ってくるとどこかしら痛み始めるものだろう。  長年使ってきた体なのだから。  だから俺はそのことをあまり気にしなかったように思う。  そう、これから大変なことが起きるとは誰も思っていなかった。

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