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ー閃光ー36

「……え!? はぁ!?」  「何で!?」と俺は続けようとしたが、思わず美潮の登場に顔を赤くしながら彼を見上げてしまった。 「え? だって、男同士なんですし、別に一緒に着替えたっていいんじゃないんですか? そうしたら、部屋を出る時間も短縮できますし。それに、同性同士なんですよー。そこ、気になるところなんですか?」 「え? あ、まぁ……確かに、同性同士なんだから、別に一緒に着替えたっていいとは思うけど……あ、なんていうのか……」  俺はまだ美潮という人間をあまり知らないのと、自分の性格が邪魔しているからなのか、完全に美潮から視線を外して答えた。  すると急に今まで明るかったところが薄暗くなり、ロッカーを叩く音が響いた。  その音にビクッとしてしまう俺。  きっと美潮が何でかロッカーを叩いた音だったのだろう。 「……え?」  「……何か?!」と心の中で驚いている俺。  そして美潮はさらに俺に近づいてきて、 「え? ちょ……ま、待て……」  と俺は美潮に向かい手を出して、静止を求めた。 「ちょ、美潮……待ってくれ……」 「分かってますよ……。だって、吉良先生には旦那さんがいることくらい知ってますよ。それに、俺にも彼氏がいますし……」 「……え?」  その美潮の言葉に、俺は裏声を上げた。  だが今の美潮の言葉と行動に、自分が美潮に襲われてしまうのではないかと勘違いしただけかもしれない。  美潮の言葉に安心すると、自分を落ち着かせて、 「まぁ、まぁ……そうですよね……確かに、俺の方が意識し過ぎてしまっていたのかもしれません……。男性同士だったら、一緒に着替えても問題ないですものね……」  まだ少し焦りながらも美潮にそう返した。 「そうですよ……。え? ってことは、吉良先生はネコなんですか?」  その美潮からの質問に俺は目を見開いてしまった。  確かに雄介や和也のおかげで、そういう話には多少は慣れた方だとは思うが、全くの他人にそういう話題を振られると、まだ慣れていないのかもしれない。 「ま、そういう反応をするってことは、そういうことなんですね。そう言われてみれば、吉良先生……可愛いですからねぇ」  その美潮の言葉にさらに顔を赤くする俺。  まさか美潮も、そういう人物だとは知らなかったのだろう。しかもタチのようなのだから。 「もし、吉良先生が結婚してなければ、僕も吉良先生のことを好きになっていたかもしれませんね……」  そう言うと、美潮は静かに自分のロッカーを閉めたのだった。

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