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ー閃光ー37
そう言って美潮はロッカールームから出て、
「お疲れ様でした……」
と言って部屋を出て行く。
出て行く直前、美潮は切なそうな表情を見せていた。だから、本当に俺のことが好きだったのかもしれない。
しかし和也の方がもっとこう、気楽だったように今は思える。
こうやって着替える時なんかは、一緒にロッカールームに入って着替えることはしなかったし、近くにはいたけど、ちょっと気持ち的には離れてくれていたように思えるからだ。
だけど美潮の場合には、ちょっと距離感がバグっているような気がするのだ。
とりあえず美潮が帰ってくれたことに安堵すると、俺はスーツのジャケットを着て、鞄を手にすると部屋を後にするのだった。
そして、いつものように車で帰宅している途中、何でか今日も渋滞に引っかかってしまう。
ため息を吐くと、雄介へメールをする。
確かに俺の場合、必要最低限のメールしかしない。だけど、いつもより遅れて帰宅することになる時くらいは、雄介にメールをしている。
だが、今さっきメールを送ったはずなのに、雄介からはなかなか返信がない。
でも、前にもそんなことがあったような気がする。それで車の窓をノックしてきて、サプライズ的な感じで現れたこともあった。
だが今日はそれもなく、程よくして、雄介からのメールが届く。
車内に響き渡るメールの着信音。
それを見ると、そこには、
『そっか……また、渋滞にハマってしまったんやね……あ、ゴメン……迎えに行かれへんわぁ……』
と送られてきていた。
「……へ?」
その雄介からのメールに、車内で裏声を上げてしまう俺。
一体、何があって迎えに来られないのだろうか。もしかしたら食事を作ってて手を離せないから迎えに来られないということなのだろうか。
俺は不思議に思いながらも、雄介は迎えに来られないのだから、仕方なく家に向けて車を走らせるだけだ。
それでも、今日に限ってなかなか車が進まない。
お昼に「後半日もすれば雄介に会える」と思ったのに、それがまた渋滞のせいで伸びてしまう。楽しみが先延ばしにされているのは気のせいだろうか。だけど、先延ばしにされても雄介に会えるという楽しみはいつまでもあるのだから、それでいいとしよう。
そう思うと、心が軽くなったような気がする。
本当に雄介や和也と出会って、「ポジティブ」という言葉を覚えたからなのか、それはそれで良かったような気がする。
今日の渋滞の原因は検問だった。俺は当然のようにアルコールなんか口にしてないのだから、軽々と通過し、車を走らせるのだった。
検問所を抜けた後は、わりとスムーズに走り抜けたように思える。
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