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ー閃光ー49
それからすぐに美里が俺のいた場所へ戻ってきて、俺の背中を押しながら、
「と、とりあえず……私も雄ちゃんがいる所に行くので、案内してもらえます?」
と言った。本当に美里という人間は、心強いというかメンタルが強いというか、案外俺よりもメンタルが強いのかもしれない。
流石に雄介の状況を聞いたときには、一瞬動揺したように見えたが、今では既に冷静さを取り戻している様子がうかがえた。
俺はとりあえず美里を連れて、俺たちの部屋へと案内することにした。
さっきいた待合室とは違い、こちらの棟は本当に静かで、俺たちが廊下を歩く音が響いて聞こえるくらいだった。
先に自分の部屋へと入ると、美里を部屋の中へと招き入れる。
そして、そこにいたのは美潮だった。
「あれぇ? どうしたんです? 一般人の方は入室禁止のはずでは?」
美潮は本当に真面目な人間なのだろう。この棟では確かに一般人の入室は禁止されているのだが、今はそのルールに従っている場合ではない。
「とりあえず、今は緊急事態だから、後でこのことについて話すから、静かにしてくれないか!」
そう言ったときには、俺は自分の口から強い言葉が出ていることに気づいた。そんな俺の迫力に動じたのか、美潮はすぐに黙ってしまった。
それから俺は美里を寝室の方へ案内した。
そこには、まだ雄介がベッドの上で座って待っていた。
「雄ちゃん?」
と美里が声をかける。
その言葉に反応したのか、雄介は美里の方を見上げた。
どうやら美里は、雄介が名前に反応してくれたことに安堵したようだ。
「なんだ……望さん、雄ちゃん、大丈夫そうじゃないですか?」
と安心したように言ってきたが、
「すみません……今の雄介の反応は、美里さんが名前を呼んだから反応しただけで、名前自体に反応したわけではないと思います」
と俺は冷静に分析して言った。
「雄介、この女性のことを覚えているか?」
俺がそう言うと、雄介は美里へと視線を向けた。
しばらくして、雄介は首を傾げ、
「……わからないですね」
と標準語で答えた。いや、むしろ敬語と言った方がいいのかもしれない。
流石に美里がそれに気づかないわけがない。特に美里と雄介の関係は兄弟だから、関西弁を使う間柄なのに、それが出ないことに違和感を覚えたはずだ。
そこで俺と美里は視線を合わせた。
これでやっと美里にも、雄介が今記憶を失っていることが伝わった。
「本当に、雄ちゃんは、そんな状態だったのね……」
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