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ー閃光ー50

「はい……そうなんですよね……。前々から雄介は頭痛が頻繁に起きていたので、そこは気になっていたのですが……まさか、今頃になって……。確かに、船が転覆して、次の日に雄介が助かった後、二、三日後には一回検査で春坂の方に来ていたんです。その時には、全然そんな気配もなく安心していたんですが、診察してくれた先生が、『もしかしたら、数ヶ月後から数年先に何かしら頭に不調が現れる場合があるかもしれない』とか言っていたんです。でも、まさかこのタイミングでとは思ってなかったですよ……」 「そういうことがあったのね……」 「とりあえず、雄介が緊急事態なので、今すぐにでもMRIで診てきます。それで、今雄介が置かれている状況が分かるはずですから」 「ですよね。そこは望さんじゃないと分からないことですから、雄ちゃんのことを望さんに任せるしかないですよね」 「ありがとうございます!」  俺は美里にそう言って、頭を下げると、今度は雄介に声を掛ける。  俺だって、今のこの状況で落ち込んでいる場合じゃない。むしろ、冷静に判断していかなきゃいけない場面なんだから、本当にいつも以上に冷静に対応しなきゃならないだろう。 「雄介……とりあえずさ、ちょっと検査しに行かないか?」  そう俺は優しく言ったつもりだったが、 「別に僕は、全然体の方は痛くありませんし、検査しに行く必要はないと思いますよ……」  その雄介の言葉に、俺は頭を抱えてしまう。  そうだ、今までの雄介の扱い方は知っているが、記憶がない雄介の扱い方はまだ分かっていない。しかも今の答え方を聞くと、少し厄介に思える。  普通の時の雄介なら、そんなに俺と反発はしないはずだ。  とりあえず、今の雄介を説得するために、俺はベッドの前に腰を下ろし、雄介を見上げる。 「確かに、体は何ともないのかもしれないけど、頭の方はどうなんだ?」 「え? 頭ですか?」  そう言って、頭に触れる雄介。 「頭の方も何ともないんですけどね……」  やはり、さっきの薬のおかげだろうか。  再び、俺は少し頭を抱えてしまう。  その時、美里が口を開いた。 「雄ちゃん……望さんのこと、困らせちゃダメでしょう。今は白衣を着てないけど、望さんはお医者さんなんですからね……。雄ちゃんって、確か、いい子だったわよね? いい子な人は、人を困らせてはいけないんじゃないかしら?」  子供をあやすように話しかける美里。その姿を、俺は見上げていた。

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