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ー閃光ー57

 流石、そこは院長という立場だろう。 「だけど、とりあえず予約してあるし、見るだけ見て、安心できればいいしな」 「確かに、望の言う通り、検査して安心できたなら、それはそれで全然いいと思うよ……」  そう言って、裕二は俺の方へと微笑んでくれるのだ。きっとそこは今は患者と医者という関係だからであろう。  俺だって医者なのだから、全然わからなくはない。だけど、こうして誰かと相談して確実な答えを見つけるのも、安心する材料なのだから。  そして雄介の順番になると、俺は特別にMRI検査室へと入っていくのだ。  これは自分が医者としての特権みたいなものなのかもしれない。  MRI検査には約二十分ほどかかる。  俺は検査室で見ていると、確かに裕二の言う通り、何も怪しいところは無かったようだ。  それに安心した俺は、検査室を出て、ソファで待っていた美里に声を掛ける。 「さっき、俺の親父が言っていた通り、頭には異常は認められませんでした。ですので、雄介は記憶だけを失くしているという状態になりますね」  今まで大分心配していた俺だったが、結果、大きな病気が無くて、そこには安心した気持ちで美里に話していた。  それを聞いて、美里も安心したようだ。  やはり船での事故の時、海で彷徨って何かを頭に打ってしまったことで、外傷性の怪我から起きた記憶喪失だったのだろう。それか、気を失っていた時間が少し長すぎて、それによるものなのかもしれない。  ただ、まだこれから雄介のことをどうするのかが決まっていない。  確かに、全くもって俺が雄介を引き取るのか、以前と同じ暮らしをしてもいいのだが、俺には仕事がある。一応は安心して家に雄介を置いておける状態ではないのだから。  かと言って、美里の所に雄介を預けるのも、ちょっと違うような気がする。 「美里さん……これから、どうしましょうか?」  そこを相談し始める俺。  俺の中では相談は誰にでもしていいと思う。結局、最後に決めるのは自分なのだから。  その俺の言葉に、美里は戸惑いの表情を浮かべた。 「ちょっと待って……望さん……?『これから、どうしましょうか?』じゃ、私には全然意味がわからないのだけど?」  その言葉に、俺は美里のことを見る。  まさか美里の口から俺に対して、少しキツい言葉が来るとは思っていなかったのかもしれない。  確かに俺の性格上、人と話すのは苦手だ。しかも、真剣な話となると、余計に苦手なのだから。 「あ、え? あー、そうですね……雄介のことについてなんですが……。えっと……俺的には雄介と一緒に住んでいたいのですが、もしかしたら、まだ脳に異常が出てしまった場合、普通に暮らすのは無理だと思うんですよ……」  そこまで言うと、俺は一旦言葉を切るのだ。

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