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ー閃光ー65

 それに男の涙は、嬉しい時だけにしよう。そう思った俺は、冷静になって、 「とりあえず、明日は親父に言ってみるよ。それに、親父はもう雄介が記憶喪失なことを知ってるからさ……」 『そういうことなら、きっと話は早いんじゃねぇかな? 俺の方は、あまり院長とは話したことはなかったけど、裕実のことは十分過ぎるほど知ってるんだろ? なら、きっと俺たちは一旦春坂に戻れると思うからさ……』 「ああ、そうかもな……」  何だか、和也に思い切って電話してみて良かったような気がする。和也たちが戻って来てくれれば、俺も凄く安心できるからだ。  本当に、頼り甲斐のある友達と言っても過言ではないのだから。  そして俺と和也は通話を切った。  その電話を終え、息を吐いた直後、目の前には雄介の姿があった。いや、正確には俺の真横に雄介が立っていた。  雄介は目をパチクリさせながら、俺の方を見ていたのだから。  俺の方は逆にハテナマーク状態だったのかもしれない。 「……ん? どうした?」 「あ、いや……何だか、望さんからしてみたら、珍しい人と電話していたんじゃないのかなぁ? と思いまして……」  その雄介の言葉に、再びハテナマークが浮かんだのは俺の方だ。  一旦、今の雄介の言葉はどういう意味なのだろうか。  雄介は和也のことを覚えているということなのか? その点はまだ不明だ。 「えっと……? 今のはどういうことだ? 雄介は和也のことを知ってるってことなのか?」 「あー……いやぁ?」  そう言って、雄介は頭を天井の方へと向けた。この仕草からすると、やはり今の雄介は知らないということだろう。  じゃあ、どうして雄介は今、そんな言葉を口にしたのだろうか。そこはまだ疑問に残る。 「じゃあ、なんで、俺が『珍しい人と電話してる』っていうのが分かったんだ?」 「んー……?」  俺の質問に、未だに頭を抱えている雄介。 「そっか……そこはまだ分からないんだな。まあ、雄介からすれば『珍しい人』というだけで、知ってる人物ってわけではないんだな」  そう納得してしまう俺。  雄介が今、記憶喪失だからだろう。  記憶の奥底には、今の電話の声や名前が残っているのだが、その記憶をうまく引き出せないのが、記憶喪失なのだろう。 「ま、いいや……とりあえず、俺は風呂に入ってくるな……」  そう言って、俺はソファから立ち上がった。

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