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ー閃光ー66
すると、何でか雄介の方も俺と一緒に立ち上がり、俺の腕をガッチリと掴み、強い瞳で俺の方を見つめてくる。
俺は心の中で雄介のその行動に「……へ?」と思っていると、
「私たちって、本当に恋人同士だったんでしょうか? なら、恋人同士だったのなら、私は望さんのことを抱いてもいい? っていうことでもありますよね?」
「……はぁ?!」
思わず雄介の言葉に裏声を上げてしまう俺。本当に今、雄介が言った意味がまったく理解できなかった。いや、理解はできているのだけど、記憶のない雄介が何でそんなことを言っているのかが理解できなかったという方が正しいだろう。
そこで、俺は息を吐く。
「ってか、雄介……? 一体どういう意味でそういうことを言ってるんだ?」
言葉と同時に、今の雄介に冷静になってもらいたいと思ったのか、俺は腕を掴んでいた手を離す。
「だから、特に意味なんていうのはないですよ。私たちの仲っていうのは、恋人同士……えっと……今の時代は同性同士でも結婚できる時代になったはずですから、私たちっていうのは、結婚してるわけですよね? なら、結婚した者同士の営みをした方がいいんじゃないですかね?」
「……はぁ?!」
そこはきっと男性だからなのだろう。そういう欲に関しては本能が働いているのかもしれない。
「まぁ、確かにそうなのかもしれないけどさ……でも、お前って、今記憶が無いわけなんだろ? なら、そういうことに関しての知識っていうのは無いんじゃねぇのか?」
「でも、そこは普通に考えて、人間なのですから、本能ってやつですよー。それに、男なんですから、目の前に好きな方がいらっしゃれば、食べちゃいたいって思うのは普通なんじゃないんでしょうか?」
しかし敬語なのに、これだけペラペラとそういうことに関しての知識がある雄介。確かに人間なのだから、そういったことに関して体っていうのは正直なのかもしれない。
そこで、俺は頭を抱える。
本当に記憶喪失の人間を扱うのっていうのは大変だ。
きっと雄介は、そんな俺を昔扱ってくれたのだろう。
だけど俺にとって、身内が記憶喪失になるのは初めてのことで、本来ならどうしたらいいのかが分からない。いや、でも雄介はそんな俺でも扱ってくれたことがあるんだから、俺にだってできるはずだ。
それに雄介は、そんな俺でも諦めることはなかったはずだ。だったら、俺も今の記憶の無い雄介を諦めてはいけないということだろう。それに、もし雄介に記憶が戻ったときに、俺がそばにいなかったら、悲しむのは雄介だから。
そう心に刻み込むと、俺は今の記憶の無い雄介と向き合う。
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