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ー閃光ー69

「あ、いや……なんかさ、冷静になって考えてみたら、確かに和也たちが春坂に戻って来てくれるのは嬉しいんだけど、また俺たちのわがままで診療所を無くすわけにはいかないだろ? そう思っちまったんだよなぁ……」  その言葉に一瞬静かになったところを見ると、和也はやはり真剣に俺の言葉を考えてくれているということになるのだろう。そして、 『……まぁ、そうだよな……。確かに、望に言われるまで忘れてたことだけど、まぁ……なんていうのか……この一年以上悩みながらも診療所を続けてきたんだから、急に見捨てるってわけじゃないけど、確かに俺たちのわがままでここを空けるわけにはいかないもんな……』  その和也の言葉に、逆に安心したのは俺の方だったのかもしれない。  やはりそこは和也ということだろう。  なんていうのか、長年俺と一緒に仕事のパートナーとしてやってきただけあるということだろう。  もっと何か言われるのかと思っていたけど、和也は俺の意見を尊重してくれたということだ。  そこに安心する俺。 「……やっぱ、そこは和也だよな……ありがとう」  もしかしたら、素直に感謝の言葉を言えていたのかもしれない。いや、自然に言ってしまっていたという方が正しいのかもしれない。  だけど、バックの方から違う意見が飛んでくる。 『本当に兄さんは、それで大丈夫なの? だって、雄兄さんがそんなことになってしまって、今の兄さんは周りに頼れる人が本当にいないんだよ。それでも大丈夫なわけ?』  本当にこう、余計なことを言ってくるのは朔望だ。せっかく俺が診療所のことも考えて言った意見だったのに、またそういった決意を鈍らせてくる。  いや、さすがにその決意を鈍らせるわけにはいかない。 『あ、そうそう! 前に和也さんから兄さんが記憶喪失になった時のことを聞かせてもらったことがあったけど、その時はまだ和也さんたちは春坂にいたんだから、どうにかなったのかもしれないけどさ。今、兄さんは一人なんでしょう? 記憶のない雄兄さんと兄さんだけで、どうにかなるの?』  そう言ってくる朔望。  やっぱり、本当に和也がどれだけ俺のことを分かっているのかが、よくわかる。逆に、朔望は俺のことをまったく分かっていないということだ。  そこで、ため息をついたのは言うまでもないだろう。 「あー、もう! 朔望は何も言うな。とりあえず、あのさ、和也だけにしてくれねぇか?」  そう俺が半分キレた感じで言うと、一瞬、和也側のメンバーたちが静かになったような気がした。気のせいだろうか。そして、和也と裕実は自分たちの部屋へと移動したのか、急に周りの音まで静かになったように思える。

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