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ー閃光ー72
とりあえず明日からは記憶のない雄介と生活することになる。確かにこれからどうなるのかは分からない。いや、これから来る未来のことが分かってしまっていたらつまらないだろうから、分からないままでいいだろう。
俺の方はとりあえずソファで横になるしかなかった。
今まで雄介という人の温もりが常にあったのだけど、今はそれがない。何となく寂しい気もするのだけど、雄介だって昔はそうだったのだから、俺の方も我慢していくしかないだろう。
だけど雄介が俺が記憶喪失になった時に言っていたことがある。
『記憶のない望から逃げ出してしまっていたことがあって、それを、今でも後悔している』
と……。
雄介が記憶を失くしてしまってから一日目が終わろうとしている。
まだ一日目だから、そんなに雄介のことが嫌だとは思わないものの、もしかしたらそのうち、昔俺が記憶を失くした時のように、俺が雄介のことを嫌になってしまうのかもしれない。
だけど俺の方は、雄介がそんなになったとしても逃げることなんてできないだろう。だって俺たちはもうすでに結婚しているのだから。それに俺の場合には本当に逃げる場所すらもない。
しかし、俺が仕事に行っている間、雄介をこのまま家にいさせても大丈夫なんだろうか。そこは疑問に思うところだ。
だけど俺には仕事があるのだから、仕方がないところだろう。
こうサラリーマンみたく簡単に有給でも使って休めるのならいいのだけど、俺たちの仕事というのは流石にそういうわけにはいかないのだから。
色々と考えているうちに、和也たちにも雄介のことを話しただけあって、自然と眠気が襲ってきたようだ。そのまま俺はソファで寝てしまっていた。
翌朝、いつもだったら朝食のいい匂いで起きるのだけど、今日は本当に何もない。
やはり雄介は記憶喪失のままだということなのであろう。
アラームで起きた俺は、半身を起こしてソファに座る。
やはりソファで寝たからなのだろうか、全身は痛いし、顔にはそのソファの生地の跡が付いてしまっているようにも思える。
そして俺は気合いを入れるために、軽く両頬を叩くと立ち上がる。
俺が起きたらまずやることは、お風呂に入ること。
どうもお風呂に入らないと一日が始まった感じがしない。
医者という仕事をしている上で、清潔感というのは一番なのだから、毎日朝のお風呂というのは俺からしてみたら、もう完全なルーティンだ。
お風呂に入ってさっぱりしてくると、やはりリビングに違和感がある。
そう、いつもいる雄介の姿がないからだ。
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