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ー閃光ー78

 だけど俺の方だって、昔、記憶喪失になったことがあるのだから、きっと生活が一変していただろう。だけど、雄介や和也は俺の側にいてくれた。どんな俺でも受け入れてくれていた。いや、正確には雄介の方は記憶のない俺から逃げ出していた。だけど最終的には俺の元へと戻ってきてくれたのだから、やはりそこは本当に雄介が俺のことを好きだっていう証拠だろう。  とりあえずあの時、和也はずっと俺の側にいてくれたはずなのだから、何だかそこにも十分に愛を感じる。  しかし、これから先、俺は一人で記憶のない雄介と付き合っていかないとならないのだから、これからの未来がどんな風になっていくのか見えない状態だ。  俺はご飯を食べ終えたのに、未だに食堂に座ったままだ。  今は悩むことがたくさんあるからかもしれない。  こう考えれば考えるほど、おかしくなりそうだ。  それに、両手で頭を思いっきり掻いたりして、周りからすれば、今の俺の状態は完全にぶっ壊れていると思われているかもしれない。  人がいなかったら、きっと発狂している状態でもおかしくはないのだから。  だけど、考えたって答えが出てくるわけでもなく、急に何事もなかったかのように立ち上がり、食器を片付けに向かった。  別に冷静になったわけではない。考えても仕方がないから考えるのをやめただけだ。それに、俺の仕事というのは全くもって人のプライベートなんて関係ないのだから、何があっても仕事はこなさなければならない。  気持ちを切り替えるために、一度、トイレにでも行ってスッキリして、顔を洗ってくるといいだろう。  本当に今はトイレに気兼ねなく行ける気がするのは気のせいだろうか。  以前は和也や雄介がいたから、なぜか気を使ってしまい、なかなかトイレに行けなかったのだけど、今は和也たちのことを気にせずにトイレに行けるのは、いいのかもしれない。  半分鼻歌混じりでトイレへと向かう俺。  だが、そこで聞こえてきたのは、誰かの甘い声だった。さすがに声は抑えられているものの、こもったような声が聞こえてくる。  俺はその場から逃げ出せばよかったものの、なぜか体が硬直してしまったというか、動けなくなってしまったというか……人間だから、やはり他人のそういう行為に興味があったのか、それはわからないけど、完全に動きが止まってしまっていた。  完全に個室の中から、そういった声が聞こえてきた。

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