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ー閃光ー80
「どうしたんです?!」
と、俺は急に男性に声を掛けられ、その声がした方向へと視線を向けると、そこにいたのは新城と実琴だった。
「……へ?」
俺はきっと、よく分からない声をあげていたのかもしれない。
「どうしたんです? 吉良先生……」
そう言って、新城は俺の腕を掴んで立たせてくれるのだ。
「あ、いや……何も……」
何だか昔の俺らしい言葉だったのかもしれない。そう、今はだいぶ色々な人に素直になってきたつもりだったのだけど、雄介が記憶喪失になってしまい、精神的にもおかしくなりかけていた俺は、昔のように素直じゃない自分に戻ってしまっていたのだろう。
「顔色、悪いですよ……」 「べ、別に……大丈夫ですからっ!」
構ってくれた新城に、素っ気ない返事をしてしまった俺。
新城と実琴は顔を合わせ、ため息をついていた。
さっきまで新城や実琴にすら素直に話していたはずなのに、今の俺は本当に素直ではなかったように思える。
「見たところ、肉体には異常はないようですので、きっと精神の方がやられてしまっているのかと思います。さっき、私たちと話していた時は普通に話していたのに、今ではそんな素っ気ない態度を取られているということは、桜井先生のことで精神的に限界がきているんだと思います。今日はご帰宅された方がよろしいのではないでしょうか?」
俺は何故か首を横に振ってしまう。
そんな態度を取る俺は、本当に小学生以下かもしれない。
そう、完全にわがままな俺だったのだから。
「では、何故、家に帰りたくないんですか? 吉良先生にとって大事な桜井先生が待っているのでしょう?」
俺が新城の言葉に黙っていると、実琴が、
「吉良先生は家に帰りたくないんじゃないですか? もし、颯斗が記憶喪失になってしまったら、今までいた颯斗はいなくなってしまうんですよね? それじゃあ、他人と一緒にいるのと同じようなものですから」
「あ……」
実琴に言われ、新城も気付いたのだろう。そこで納得したのか、
「でも、今桜井先生を吉良先生が見捨ててしまったら、誰が桜井先生を支えてあげることができるんですか? 誰ももう桜井先生を支えてくれる人はいないと思いますよ。今、桜井先生を支えられるのは吉良先生しかいないんですから、ちゃんと支えてあげてくださいね」
そう言って、新城は笑顔で俺に向かってくれた。
何だかその言葉に気持ちが少し安心できたのは気のせいだろうか。
「それに、もし桜井先生の記憶が戻った時、目の前に吉良先生がいなかったら、寂しくないですか?」
その言葉を聞いて、俺は思い出す。
俺が記憶喪失から元に戻った時、目の前にいたのは和也だった。そう、その時雄介はレスキュー隊の訓練に行っていたので、いなかったのは当然だったのだが、それでも寂しかったのを覚えている。
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