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ー閃光ー84

 やはり新城と実琴では、和也と裕実のような感じにはならないのだろう。もしかしたら俺の心の奥底で、新城と実琴にも、和也や裕実のようにしてくれるかもという淡い期待があったのかもしれない。  だが、その期待は裏切られたように思える。  人は皆、性格というのは違うものだ。それを今、実感している。  とりあえず新城たちと別れ、気持ちを入れ替えて午後からの仕事を始める俺。  しかし、午後の仕事さえも今の俺は身が入らないような気がするのは気のせいだろうか。何度も仕事の合間にため息が出てしまう。  今は仕方がない。雄介がああなってしまったことで、今までの生活に狂いが出ているのだ。  午後の診察や仕事を終わらせると、俺は病院内の自分たちの部屋に戻る。  そして思いっきりため息をつき、持っていた荷物を机の上にどんっと置く。椅子に深く座り込む。  この仕事をしていて、久しぶりにこんなに疲れたような気がする。雄介のことが気になっているせいかもしれない。雄介が記憶喪失のため、あのいつもの笑顔は見られず、雄介が作ったご飯も食べられない。キスも優しい言葉も喋り方もなく、俺の調子が狂っているのだろう。  雄介との幸せな時間が無くなってしまったことで、完全に俺の方が調子を狂わせている。頭も体も機能しなくなってきているようだ。  今まで、雄介が仕事で関西方面に行ってしまった時は遠距離恋愛になったけど、電話すれば声が聞けた。それに、遠くにいても雄介がたまに会いに来てくれたことで、会うことはできた。だが、記憶喪失になってしまうと、それさえもできなくなる。だから、俺の方が完全に調子を崩してしまうのだろう。  しかし、今からこんな状態では、先が思いやられる。  要は、ヘコんでいる場合ではないということだ。  俺は自分の顔を二回ほど軽く叩き、気合を入れる。そして仕事を済ませ、美潮と一緒に部屋を出ると、部屋のドアの前には新城と実琴が待っていた。 「え? 新城先生に、実琴さん?」  二人を見た瞬間、俺は声が裏返ってしまった。あまりにもその二人の存在に驚いたのかもしれない。 「吉良先生、待っていましたよ。今日、私たちも吉良先生のお家に伺ってもよろしいでしょうか?」 「……へ?」  その言葉に、さらに言葉が裏返る俺。一体、どういう風の吹き回しだろうか。しかし、新城たちの真意はまったく見えてこない。

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