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ー閃光ー93
それに、中学生ともなれば、家事でも何でも一人でできる年頃だろう。まあ、それをちゃんと小学生の頃に教えていれば、中学生の頃には親がいなくてもなんとかなるものなのだから。だけど、たとえ思春期で親がいない方がいいと思っていても、実際いないのはわりと寂しいことだ。
それを思い出した俺は、
「美里さん……今日はもう、帰宅なされてはいかがですか? もしあれでしたら、俺が美里さんの家まで送りますよ」
「あら……望さん、あ、いや……私からしてみたら義理の弟君が心配してくださるのでしたら、そろそろ自分の家に戻りましょうかね?」
「そうした方がいいですよ。ふふ……吉良先生に心配されたら、しっかりと家で休んだ方がいいと思いますしね」
「ですね。雄介が望さんに惚れるわけが今わかったような気がします。では、私はお邪魔いたしましたー」
そう言って美里はその場へと立ち上がる。
それを俺は支え、そして美里の家へと連れて行く。そして、俺は美里に、
「今日は、本当にご飯を作ってくださって、雄介のことを見てくれて、ありがとうございました。ちょっと、昨日の夜雄介とはゴタゴタとしたことがあったので、本当に助かってます。本当に今日はありがとうございました!」
と頭を下げる。
「いえいえ、大丈夫ですよ。私だって実際、雄ちゃんのことが気になってますからね……。私が気になっているのなら、当然、望さんも雄ちゃんのことが気になっているかと思うので……。きっと、仕事にも身が入らないことでしょう? だから、今度は私が雄ちゃんのことを見守る番っていう感じなのかしら? 今まで守ってもらった分、今度はお返ししないとね」
その美里からの力強い言葉に、俺は目を見開いてしまう。
本当に雄介の言う通り、美里という人物は精神的に強いと思う。
雄介がこんなことになっても、あまり動じることなく、むしろ、立ち向かってくれているのだから。なら、俺も美里のように強くなろうと思う。
そして俺は今一度、美里に頭を下げる。
「では、あとはゆっくりとしてくださいね。それと、もし何かありましたら、僕のスマホに連絡いただけると、すぐに飛んできますから……」
きっと今まではそれも雄介の役目だったのかもしれないが、今は雄介が記憶喪失になってしまったのだから仕方がないだろう。今はとりあえず、美里のことは俺も手伝っていかないとならない。
そこで、俺は今一度美里に頭を下ると、美里は家を後にする。
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