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ー閃光ー94

 とりあえず今日は美里を家に帰し、少しひと息ついた俺。そしてゆっくりと自分の家に向かう。  それに部屋には雄介がいるし、新城や実琴も今日は家にいるのだから、少し安心した気持ちで家へ向かう俺。そして玄関から中に入ると、何だか騒がしくしているように感じた。  今、部屋の中にいるのは新城と実琴と雄介のはずだ。  自分の家の廊下を歩きリビングに入ると、雄介と新城たちがそこで何かを話したり、トランプをしたりして騒いでいるように思えた。  しかし、新城と雄介というのは妙な組み合わせだ。今までこの二人が交わったことなんてあっただろうか。むしろ、俺自身も今まであまり新城と真面目に話をしたことがなかったのだから、当然雄介だって新城とはあまり話をしたことがないのかもしれない。  とりあえず、俺はそんな姿を少し近づいて見守る。そうしてソファでも、少し離れた場所に腰を下ろした。  それに気づいたのは新城で、 「吉良先生、おかえりなさい……」  そう言われたのだが、全くの他人である新城に「おかえりなさい」と言われたことに違和感を覚えつつも、 「ああ……」  と俺は答え、新城はその後の言葉を続けた。 「今、桜井先生とトランプしているんですよー」 「みたいですね」  その新城の言葉に、適当に相槌を打つ俺。俺自身、ゲームには全く興味がない。だが、新城の場合にはどうやら違う意味で雄介とトランプをしていたらしく、 「吉良先生も一緒にやってみませんか? 頭の体操にもなりますよ」  そう意味ありげに新城に言われたのだが、俺は本気でそういったゲームに興味がなく、新城が言いたいことも全くわからずに遠慮し続けていた。 「マジで、いいって……俺、そういうゲームって興味ないからさ……」 「そうでしたか……。大人になってやってみると意外に面白いもんなんですけどねぇ……」  やはり意味ありげに言ってくる新城なのだが、俺は全く新城が言いたいことがわからず、首をかしげたままだった。  それに気づいたのか、新城は一度咳払いをすると、 「ババ抜きもやりましたが、今は神経衰弱をしているんですよ……頭を使って……」  新城は「頭を」という言葉を強調して使ってきたように思えた。  「頭」と言えば、今の雄介は記憶喪失で……と思った瞬間、さすがの俺でも新城が言いたいことがわかったような気がした。  本当に今日は新城をいろいろな意味で連れてきて良かったのかもしれない。さすがは頭の回転が早い人物だ。  それに、昔新城は和也を引き抜こうとしていたことがあって、それは親父との狂言だったという話もあった。それを考えれば、今新城がやっていることなんて朝飯前なのかもしれない。

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