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ー閃光ー99

 いや、そんな話、今すぐに答えられるわけがない。それだけ俺にとっては難しい話なのだから。  数分経ったところで、新城が改めて言葉を発する。 「今の質問は難しかったですかね? では、吉良先生は桜井先生のこと、今でも好きでいらっしゃるんですかね?」  本当に新城の言葉というのは直球だ。  その新城の言葉に、思わず俺は頭を上げてしまった。  しかし、今の新城の言葉に対して俺の中では、完全に「イエス」だ。 「あー、それでしたら、そりゃあ、雄介のことは好きですよ」 「好きでいらっしゃるんですよねぇ。だって、結婚したくらいなんですから……」  そこで一旦、新城は言葉を切った。そして、再び言葉を続けてくる。 「……結婚したんなら、本当に相手のことが好きなんでしょうね。なら、相手がどんな時でも一緒にいてあげられたらいいんじゃないでしょうか? それが嫌だって言うのなら、やはり、そこはもう、離婚しかないですよね?」  その真剣で、怖いくらいに真面目な新城の言葉に、俺は本格的に顔を上げ、新城を見つめてしまっていた。  まさか新城からそんなことを言われるとは思っていなかった俺。  だけど、マジな話、今の雄介が嫌なら、ここは一旦離婚するという話になるだろう。  それは何だか違う気がする。  だって俺は雄介のことが好きで結婚したんだし、同性でも結婚ができるようになった時、雄介は一番に喜んでいたけど、俺だって心の中ではすごく嬉しかった記憶がある。それに、婚約指輪を予約しに行った時だって、「これで雄介は完全に俺のものになるんだ」という独占欲だって出してしまっていたのだから。それに今一番大事なのは、美里のお腹の中には、俺と雄介の子供がいることだ。  本当に、雄介の記憶がなくなって、今までの雄介じゃなくなったということで、自分自身の勝手な判断で、俺は雄介という人間を捨ててしまってもいいのだろうか。  だんだんと新城の言葉で、俺の中で何かが目覚めてきたような気がする。  それに、以前俺が記憶喪失になった時に、雄介は離れてしまったけど、そばにいてくれた気がする。完全に別れたという感じではなかった。それに雄介の場合、後に反省もしてくれていたのだから、俺も今の雄介から離れてはいけない気がしてきた。むしろ、今の状態の雄介を支えていくのは、俺の役目なのだから。 「あ……」  俺の中でしっかりと答えが出て、一気に体から力が抜けたような気がする。  そこで新城はクスリと笑うと、 「お二人は結婚したのですから、どんな困難があっても、お二人でいることを誓った仲なんじゃないでしょうか?」  その新城からの問いかけに、益々、俺の心臓の鼓動が高鳴っていく。

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