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ー閃光ー103

 とりあえず新城たちを部屋へと案内し、布団を敷くと、俺は安心したかのようにお風呂へと向かった。  今日はわりと疲れた方かもしれない。  仕事ではなく、プライベートの方でだ。  確かに、雄介があんな状況だからというのもあるのかもしれない。だって、こうしてたくさんの人間の接客をするのは、いつも雄介の役目だったのだから。  俺は今日の一日の疲れを取るために、珍しく浴槽に浸かることにした。  一人の時間が欲しかったからかもしれない。  一旦体を洗っている間に、浴槽にお湯を溜める。  そして、ゆっくりと体をその浴槽へと沈めた。  そこからゆっくりと息を吐き出す俺。  やはりこれが歳のせいなのだろうか、自然と息が出てしまうのだから。  しかし、やはり雄介が記憶喪失のままでは、何かが足りない。  雄介の温もりも、会話も、今は何もない。  確かに、温もりも会話も雄介とあるのだけど、記憶喪失の人物というのは、まるで別人のようで、別人と会話しているような感覚なのだから。  俺は溜まっていたお湯を止め、そこで足を抱える。  何か寂しくなってしまったからなのだろうか。温もりが欲しくなったからなのだろうか。一人お風呂場で足を抱えてしまっていた。  確かに今のこの状況は、悩んでも仕方がないことなのだけど、どうしても悩んでしまう。  それに、もう後は時が解決してくれないとどうしようもない状況だというのも分かっているのに、人間というのは悩んでしまうものだ。  雄介と楽しく会話していた日々。抱きしめられていた日々。そんなことを思い出すたびに、俺は壊れそうになる。  今は新城や実琴もいるけど、やはり完全な他人では、心に空いている穴を埋められないのだろう。それに、新城たちは和也たちと違って、まだそんなに気を許している相手ではない。だから、未だに深い話ができていないのかもしれない。  もし和也たちがそばにいたなら、もっとこの状況を楽しく過ごせたのかもしれないのだから。  やはり和也たちに来てもらった方がいいのだろうか。  いや、島の方も重要だから、俺たちが帰るまでは和也たちに診療所の方を任せるしかないだろう。  しかし、本当に悩み事というのは尽きない。  逆に言えば、人間だからだろう。  人間だから、人生だから、悩み事というのは尽きない。それが生きている証なのだから。 「よーしっ!」  俺はその場に立ち上がる。  とりあえず、悩んでも仕方がないから、ちょっと気合いを入れることにした。

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