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ー閃光ー114

 その俺の答えが合っているかどうかは分からない。それに、いきなり中学生である琉斗に、雄介が本当に記憶喪失だということを教えるのは、少しハードなことではないかと思うのだが。だが、美里は琉斗のことを止めようとしないのだから、もしかしたらそれで良いのかもしれない。  俺は美里の方へと視線を向ける。  すると美里は俺に向けて笑顔を見せてくる。  さすがは雄介のお姉さんという感じなのかもしれない。  きっと、雄介が記憶喪失だということを本当に教えるために、わざと今日は琉斗もこの家に呼んだのかもしれないのだから。  本当に雄介のお姉さんは、そういうところがすごいんだと思う。肝が据わっているというのだろうか。子供にもそういった教育を教えているのだろう。  子育てについては、美里の方が俺たちから見たら大先輩だ。しかも琉斗のことをここまで一人で育ててきたのだから、本当に大先輩でもある。  でも、もしこのまま雄介の記憶が戻らなければ、今度は俺一人で自分の子供を育てていかなければならないのだから、やはり今日美里が琉斗を呼んだのには、そういった意味が込められているのかもしれない。  既に俺は、無意識のうちに美里に子育てについていろいろと教えられているのは気のせいだろうか。  しかも琉斗にとっても教育になっているのだから、やはり美里はすごい人物だと思える。 「ねぇねぇ、雄介叔父さん……本当に僕のこと覚えてないの?」  今、俺の前に座っている琉斗が、斜め前に座っている雄介に話しかける。  その言葉に反応したのか、それとも『雄介』という名前に反応したのかは分からないが、雄介は斜め向かいに座っている琉斗の方へと視線を向ける。 「……ん?」  雄介は琉斗の言葉に一言だけ答える。  目が虚ろで、座っている。と言った感じで答えている様子を見ると、やはり雄介らしくないところだ。  記憶のある雄介だったら、琉斗の言葉に答える時、きっと笑顔で答えているだろう。 「僕のこと、覚えてない?」  琉斗は雄介に見つめられて、不安そうに同じことをもう一度聞いているようだ。 「……ん? うー……ん……」  唸っているような、答えているような、それとも雄介の記憶の奥底では、もしかしたら琉斗のことを傷つけてはならないという指令でも出ているのか、こう曖昧な答え方をしているように思えるのは気のせいだろうか。  すると琉斗は今度、美里の方へと視線を向け、どうやら瞳だけで美里に何かを訴えているようだ。  それに気づいた美里は、 「ま、そういうことなのよ……」  と答えていたのだから、どうやらその琉斗の視線だけで、琉斗が何を言いたいのかが分かっているという証拠だろう。

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